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Interview

インタビュー

「日仏協力や技術開発」から復興を支える

ファビエンヌ・ドゥラージュ

在日フランス大使館 原子力参事官

2021.3.18

 
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Profile

モンペリエ大学博士号取得、材料科学技術エンジニア。1992年より、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)の研究エンジニアとして、 放射性廃棄物のコンディショニング研究やMOX燃料、第4世代原子炉向け燃料の研究に携わる。CEAカダラッシュ研究所 燃料研究部 軽水炉燃料照射・解析プログラム研究室長、 多種燃料性能評価・検証研究室長を経て、2020年9月より現職。

01

在日フランス大使館の原子力参事官としての任務

日本とフランスは、原子力開発において長年にわたり協力関係を構築してきました。私の任務は第一に、フランスを代表し、 核分裂と核融合に関連する国際協力やフランスの政策を推し進めることです。次にフランスの原子力関連企業をサポートすることです。 これらの任務に加え、在日フランス大使館原子力部はフランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)の日本代表事務所も兼ねています。 われわれはCEAを代表して原子力分野だけでなく、原子力以外の分野においても活動しており、基礎物理学や数理、生命科学、マイクロエレクトロニクスやコンピューティング、 再生可能エネルギー技術といった様々な研究において、日本のパートナー機関・企業と技術的な連携を図っています。

02

福島第一原子力発電所を視察し、構内の除染状況と廃炉作業の現状、凍土壁の設置に感銘をうける

2020年の秋、フランス原子力企業の日本法人、および日本駐在事務所の代表、そして、在日フランス大使館原子力参事官を対象に企画された福島第一原子力発電所の視察に参加する機会がありました。 視察前は、2011年当時、テレビで見た被災者の姿や、津波で大きな被害を受けた景色、水素爆発によって破壊された原子炉建屋の屋根などの映像や写真が記憶に残っていました。 その後、福島第一原子力発電所構内の除染や安全確保のために多大なる努力が注がれている内容の様々な記事を読み、日仏協力の一環で関わったフランスの同僚たちからも、 これまで取り組まれた計り知れないほどの作業について聞いていましたが、実際に自分の目で見ると、事故から10年後の構内の除染状況と廃炉作業の現状が分かり、とても感銘を受けました。 また、多くの難題に取り組まれてきたことがうかがえます。最も印象に残っている取り組みを一つ挙げるならば、事故のあった1~4号機の周囲を取り囲むように地中に設置された凍土壁でしょう。 実際に、1550本近い凍結管が地中30~35メートルの深さに埋められ、長さ1.5キロメートルに及ぶ氷の壁によって、地下水が原子炉建屋内の地下部分に流れ込んで新たな汚染水となるのを防ぐのです。 これは非常に画期的で、このような難題に対する工夫された解決策だと考えます。 視察団のメンバーたちからは、発電所内のほとんどのエリアで特別な防護服・マスクなしで作業ができるまでに空間線量が下がっていること、 放射性核種を取り除く処理が必要となる汚染水の発生量を抑制していること、また2号機で初めて格納容器内の燃料デブリ堆積物の持ち上げに成功したことに対する感銘の声などがありました。

03

事故当時は、日本国内の様々な経路から入ってくる情報を選別し、分析することがフランス大使館原子力部の役割であった

事故直後から数週間後まで、在日フランス大使館原子力部は、経済産業省など日本の関連省庁が行う記者発表や原子力部がもつ日本国内のネットワークを通して得た情報を、 フランス本国にリアルタイムで報告していました。駐日フランス大使ならびに放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)、原子力安全規制当局(ASN)、原子力・代替エネルギー庁(CEA)といった本国の原子力関連機関、 そしてフランス外務省へ正しい情報を送るため、日本国内の様々な経路から入ってくる情報を選別し、翻訳し、そして分析をすることが、フランス大使館原子力部の役割だったためです。 同時に、フランスのメディアや外交筋からも、福島で起きていることを明らかにすることが求められていました。原子炉の状態が安定した後は、本国への報告や意見交換の頻度は徐々に減っていき、 本国に送る情報の内容や形式も変化していきました。このころから、福島に関するメモ書き(簡潔な報告書)に加え、定期的なニュースレターも発行し始めました。 加えて、福島の復興の進捗状況に関する概要も毎年発表しています。10年の節目にあたり作成された最新のとりまとめ資料は、こちらのリンク(フランス語のみ)からご覧いただけます。

04

福島第一原子力発電所の廃炉作業において、燃料デブリの取り扱いが最難関の取り組みと考える

事故のあった原子炉の解体作業、とくに炉心溶融によって溶け出した1~3号機の燃料デブリの取り扱いは最難関の取り組みです。 通常の廃止措置後の原子力施設や原子炉の廃炉作業に使われる技術は福島の事故炉には使えないため、革新的な技術や新たな手法の開発が必要となるでしょう。 実際に、燃料デブリの取り出しはそれらの位置や特性を把握することから始まります。従って、炉心にあるデブリの場所を特定するために、 重量のある構造物に妨げられ放射線量の高い環境下でも移動できるハイテクロボットの使用を必要とする現場の取り組みが不可欠です。 遠隔操作システムを使って燃料デブリのサンプル(試料)を抽出し、それらの性状を把握するための分析も必要でしょう。その後はじめて、 環境への影響、作業員へのリスク、廃棄物処理などを考慮し、取り出しに向けたシナリオを構築することができます。そのすべての段階が1Fの廃炉を成功させるために重要な要素だと私は考えています。

05

脱炭素社会を実現するために原子力は、再生可能エネルギーの発電量の不安定さに対応する大事な役割

地球温暖化の問題への取り組みの一環として、日本とフランスは、2050年までに脱炭素社会を実現するという、世界的なエネルギー転換に取り組んでいます。 2020年12月には、経済産業省がグリーン成長戦略の実行計画を発表しました。指針となる重要事項は、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの比率を最大50〜60%まで拡大すること。 私は、カーボンフリーで安定的かつ効率的な電源である原子力エネルギーが、再生可能エネルギーの発電量の不安定性に対応する大事な役割を担うであろうと考えています。 その上、原子力発電は、この数年で、エネルギーレジリエンスが証明され、変動するエネルギー需要に応えるのに適していることも確認できました。

06

原子力は、フランスのエネルギーミックスの要、経済成長の基礎であり続ける

© 在日フランス大使館

フランスは、地球温暖化対策の一環として、2050年までにカーボンニュートラルな社会(脱炭素社会)を実現することを目標に、世界的なエネルギー転換に取り組んでいます。 再生可能エネルギーの比率を高めつつ、フランスの原子力発電施設の新設・リプレースのための分散投資を促すために、エネルギーミックスの多様化に取り組む中で、 フランス政府は2035年までに原子力の比率を総発電量の50%に下げる目標を定めました。2020年12月にエマニュエル・マクロン大統領が、「エネルギーや自然環境の未来も、 また経済や産業の未来も、フランスにとって重要な戦略の未来もすべて原子力にかかっている」と、あらためて述べたとおり、原子力エネルギーは今後数十年間にわたり、 フランスのエネルギーミックスの要、経済成長の基礎であり続けるでしょう。

07

若い世代の方々が原子力に興味を持ち、積極的に学んでくれることを願う

フランスと日本は、天然資源の少なさや2050年までに脱炭素社会を実現するという同一の目標、長年培ってきた原子力技術など、エネルギー面で類似点があります。 その両国は同様に、安全を最優先し、再生可能エネルギーと原子力エネルギーそれぞれのメリットが互いに補完し合う、安定的で持続可能な電源構成を取り入れることができるに違いないと、 私は確信しています。フランスと日本の若い世代の方々が原子力に興味を持ち、積極的に学んでくれることを心より願っています。

08

日本とフランスの協力関係をさらに発展させ、地球温暖化防止に役立ちたい

東北地方は、東日本大震災および福島原発事故から大きな復興を遂げてきました。とりわけ、福島沿岸地域に関しては、まだ多くの課題に直面しているものの、その復旧した姿には目を見張るものがあります。 再建、復興のための多大な努力によって、この地域が、今後10年後には期待していたような姿になっていることを願っています。 その頃には、私の在京フランス大使館原子力参事官の任期は終わっていることでしょう。原子力参事官としての任期中に、 原子力エネルギーを支援するため日本とフランスの協力関係をさらに発展させ、それによって地球温暖化防止に役立つことを願っています。

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