コラム

笑いは万薬の長

コンピューターの発展とライフスタイルの変化

宇野 賀津子 氏 《(公財)ルイ・パストゥール医学研究センター インターフェロン・生体防御研究室長》


『原子力文化2017.4月号』掲載


コンピューターの発展とライフスタイルの変化



朝起きると、メールをチェックし、急ぎの物はとりあえず返答する。その後朝食、洗濯物を干して出かける。京都まで行きの電車は約20分少し。数年前までは、これは貴重な読書時間だった。新書版なら往復1~2日で読めた。事故後1年間で読んだ放射能や事故関連の本は、整理してみると150冊以上で、大半は電車の中で読んだ。
iPadを数年前から持ち歩くようになって、電車の中でメールの続きを読むようになった。簡単な返事をして、添付が必要な返事や長文は、研究所について対応する。ニュースやフェイスブック等もここでチェック。こうなると本を読む時間がない。周りを見回すと、半分以上は携帯端末をいじっている。本を読んでいる人は10人に一人ぐらいだろうか。
毎日メールをみていると、朝型の人、夜型の人、職場でしか対応しない人、その人のライフスタイルが見えてくる。夜12時頃にメールすると即、返事が返ってくる人もいる。夜メールを出しておくと、朝5時過ぎに返事の返ってくる人もいる。医者に多い。その人のライフスタイルを知って対応すると、やりとりもスムーズとなる。
2011~12年頃、福島の自治体関係者とのメールでのやりとりは、あまりスムーズでなかった。○月○日、福島に行くので次回の企画の相談に寄りたい、とメールを出しても返事がない。たまりかねて、前日に電話をすると、「お待ちしています」との返事。こんな調子で福島の自治体関係者とメールだけでやり取りの出来る方は限られていた。ほとんどの場合、担当課アドレスでのやり取りが普通で、それも若手の数人で管理しているとのことだった。
ともかく、2011年当時は福島の県庁を含め、福島の市町村ではメール事情が同時期の大学や企業関係と大きく違っていた。事故後、桁違いのメールの嵐に対応出来なかったことも多かったようである。そこへ行ってみないと、わからないことも多い。
まあ大学関係でも、私より年上の方となると対応はさまざま。コンピューターの発達とともに常に最新の機器を導入して対応した人もいる一方、一部の医学部系の教授は、定年退官後初めて自分でメールが出来るようになった人もいる。それまでは全て秘書さんが重要なメールは印刷して机の上においてくれたし、電話で指示を仰いでくれたとか。定年後困って自分でメールが出来るようにマスターしたとのこと。それでも、添付ファイルの開き方、見方がわからないと電話がかかってくることがある。
私自身は、3.11以降、いろいろな自治体の方とメールで連絡を取り合った。自治体の中で、メール対応がスムーズだったのは兵庫県。福島県からのホールボディ検診車の受け入れと県外避難者のカフェの場所提供をお願いしたが、事前に訪問したのが一度だけだった割には、対応が非常にきめ細かく、スムーズであった。さすが阪神・淡路大震災を経験した自治体と思った。
科学技術の発達は、人と人との距離感をなくしている。外国であろうと何処にいようと、24時間以内に返事のくる人は返事がくる。一方で、メール等になれていない人との距離感は大きくなっている。福島は、ロボット産業を通じてIT最新県となることを願っている。

(『原子力文化2017.4月号』掲載)

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