コラム

笑いは万薬の長

福島の農産物の放射能汚染の現実と風評被害

宇野 賀津子 氏 《(公財)ルイ・パストゥール医学研究センター インターフェロン・生体防御研究室長》

第6回


福島の農産物の放射能汚染の現実と風評被害



2014年の新米がJA白河から届いた。とても美味しいお米で、炊くとつやつやしている。
添えられた組合長の言葉に、心が痛んだ。今年の作柄はやや良と豊作ではあったが、価格が低迷、とりわけ福島産が買いたたかれているとのこと、事故前は近隣の県より高値で取引されていた福島のお米が、相場よりかなり安くしないと流通しない、たとえ流通したとしても業務用、つまり福島県の表示がいらない世界に流れているとのことである。
福島は、2012年から米の全袋検査を始めた。2012年度で、100ベクレル/キログラムを超えたお米は七一袋だったという。1200万袋測定しての結果である。わずかな放射線を短時間で測定するための技術開発も並大抵でない。おまけに、これも風評被害を払拭しようとの関係者の、並々ならぬ決意の現れであろう。2014年の結果は、1000万袋測ったところで、基準値超えはゼロとのことであった。
2012年秋、基準値超えのお米の比率が心配していたよりずっと少なかったというのは、関係者の印象であろう。実際、この数字は、私も含めて周辺の研究者も、心配していたほどでなくよかった! と思った。チェルノブイリ近辺では事故後25年経過してもなお、食品の放射能汚染は一定程度みつかるという。
それ故、やはり農業への影響をいちばん心配していた私は、当時『放射能と栄養』(白石久二雄著)を読んで納得した。そこには、ミネラル分が少ない白ロシアやウクライナ草原地帯の土壌は、より放射性物質で汚染しやすいことが書かれていた。また、土壌への石灰の添加や多量の堆肥、土地改良材の添加により汚染レベルを減らすことが出来た一方、微量元素の土壌からの元素吸収をも低下させてしまったとも書かれていた。
その後、『土壌汚染』(中西友子著)を読んで、日本の農学関係者の努力にも頭が下がる思いがした。土の中のセシウムの汚染度と、稲へのセシウムの移行とは比例せず、むしろカリウムの濃度に反比例したという。結果的に日本では粘土質でこれにセシウムが強く吸着したことから、土の汚染度の割に食品への移行が少なかったことが幸いした。実際測定してみると、基準値を超える田んぼは、砂質の田んぼであったという。ここから見えてきたものは、その土地で、その地の土で栽培しないと結果はわからないということだった。
また、福島の果物についても、冬場に樹皮を一生懸命洗ったと聞いた。それは、根からのセシウムの移行でなくむしろ樹皮についたセシウムが果実に移行することがわかったからという。食品の汚染対策ついては、そのものの特性を知り、土地を知り、その土地で考えてわかることが多々ある。参考にしたとしても、チェルノブイリのデータで、福島を語ってはいけないということである。

(『原子力文化2015.1月号』掲載)

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