コラム

笑いは万薬の長

笑うと免疫力が上がる、本当?

宇野 賀津子 氏 《(公財)ルイ・パストゥール医学研究センター インターフェロン・生体防御研究室長》

第1回


笑うと免疫力が上がる、本当?



福島第一原発事故直後、長崎大学から福島へ飛んでこられた山下俊一先生が、パニック寸前の状況になんとか落ち着いてもらおうと、「ニコニコ笑っている人に放射能の影響は出ません」と言われたことがその言葉尻をとらえて、後日あちこちから非難されました。 「笑うと免疫機能が上がる」根拠となったのは、生きがい療法の主宰者の伊丹仁朗先生(岡山県倉敷市:すばるクリニック院長)が1991年にがん患者さんを吉本興業の「なんばグランド花月」へ連れて行って、大笑いする前と後で血液をとり、免疫細胞の一つであるナチュラルキラー(NK)細胞の活性を測定した実験です。
大笑いした後で、低めだった人のNK細胞活性が特に目立って上昇していました。NK細胞は、身体の中で生じた変異細胞の除去に重要な役割を果たす細胞です。この活性が上昇することは、発がんやがん再発の防止にプラスに働くと言えるでしょう。
私自身は二回目以降の同様の実験で、NK細胞活性の測定など免疫機能測定をお手伝いしました。残念ながら私が調べた時は、免疫機能が上昇するという結果は得られませんでした。
これは私の腕の問題ではなく、吉本へ行くと免疫機能が上がるということがあまりにも有名になりましたので、二回目以降は吉本へ行く前に皆さんのNK細胞は活性化されていて、吉本へ行っての前後では差が出なかったというのが事実でしょう。
ところが毎回、伊丹先生だけは大きく上昇していました。伊丹先生は患者さんを巻き込んで実験するときは、下準備にずいぶんと気を遣われ万全の準備をしておられました。実験が終わって一番ほっとしているのは伊丹先生で、それが結果に現れていたのでしょう。
伊丹先生の実験は、比較する対照群のない実験でしたので学問的評価としてはむずかしいですが、筑波大学の故林隆志先生は、講義を聴いたときと、大笑いしたときの遺伝子変化を調べ、動く遺伝子が異なることを明らかにしました。特に大笑いしたときは、免疫と関係のある遺伝子が動くことが明らかにされました。この研究は国際誌に掲載され、学問的にも評価に耐える研究ですので、笑うと免疫機能が上がるというのは間違いない事実です。
さらにその後つまらぬ講義を聴いたときよりも漫才を聞いて大笑いした方が食後の血糖値の上昇を押さえられることも、糖尿病の患者さんを対象とした実験で、明らかにされています。これらの結果は、「笑いは万薬の長」であることの証です。

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