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まちづくり・エネルギーセミナー ~地域の未来とエネルギーを考える~

掲載日:2024.3.21

2023年12月20日に愛媛大学社会共創学部において「まちづくり・エネルギーセミナー」を開催しました。
持続可能な地域の未来、次の世代を担うまちおこし事業、これからのエネルギーについて、愛媛大学の学生7名と一緒に考えました。開催の様子をレポートにまとめました。


トークセッション 講師:吉村一元氏(経済産業省 エネルギー・地域政策統括調整官)× コーディネーター:やのひろみ氏

私たちの生活や産業を支える「エネルギー」は、「まちづくり」や地域の活性化にも重要な要素で地域の未来に深く関わっています。
日本のエネルギーを取り巻く状況を教えてください

日本は、エネルギー資源の乏しい国で、エネルギー自給率は13%(2021年)。石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。ロシアによるウクライナ侵攻により、世界的にLNG(液化天然ガス)の需給ひっ迫・価格高騰が発生しています。海外への依存度が高い日本は、エネルギー資源の価格が上がってしまうと、どうしても電気代も上がってしまいます。本来は次の産業振興に向けて大切な税金を使いたいところなのですが、国民の負担が上がると大変なので、現在は税金を使って電気料金などの負担緩和策をしています。
エネルギーというのは、「安全性(Safety)の確保」が大前提ですが、「安定供給(Energy Security)」が大事です。その上で「安価(Economic Efficiency) 」に、そして「環境面への配慮(Environment)」が必要になります。現在、この”S+3E”がエネルギー政策の基本的な視点として取り組むことが重要とされています。




日本は2050年までのカーボンニュートラルを宣言しましたが、脱炭素電源の再生可能エネルギーと原子力発電の割合を増やしていくことが重要ですが、今後、どのように進めていくのか教えてください。

再生可能エネルギーで注目しているのは「太陽光」と「風力」です。再生可能エネルギーの良い点は、国内で生産できるというところです。例えば、太陽光は電気がなくてもパネルを置くだけで発電ができます。しかし、同時に悪い点も存在します。太陽が隠れてしまうと発電しなかったり、風力も風の強さに発電量が左右されてしまいます。電気が本当に必要な時に天候が悪いと頼れないという点はデメリットです。日本が2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、再生可能エネルギーの割合を増やしていく必要があります。今後は、洋上風力発電もどんどん活用していきたいと考えています。

2050年のカーボンニュートラルを達成するためには、原子力発電も不可欠です。
現在、全国で12基の原子力発電所が動いています。さらに5基は既に原子力規制委員会の認可を受けていて、地元同意が得られれば、再稼働を進めていくことになります。
また、今後は新しい形の原子炉も開発し、導入していくことも考えています。

原子力発電で使われるウラン資源も海外から輸入しており、ウランは一度輸入すると長期間使用することができます。また、一度燃料として使い終えても再処理することで、再び原子力発電の燃料として使うことができます。その再処理の過程で高レベル放射性廃棄物が発生します。 現在では地下300m以深の安定した岩盤に埋めるということが世界的な認識になっています。その場所を日本も探しているところです。

処分場を決めるにはいくつかのプロセスを踏むのですが、まずはその土地のことにを文献や書物を使って2年間「文献調査」をするというのが最初のプロセスです。この文献調査に協力をしてくれた自治体には、国からまちづくりに使える交付金(1年間あたり10億円)を提供させていただきます。その交付金を用いてまちづくりの議論を並行して進めていこうという政策を進めています。
この政策を進めていく中で、うちには来てほしくないと言われる自治体もありますが、この問題は大事だから知らなければいけないと言ってくれる自治体もあります。
現在、「文献調査」を受け入れていただいているのは、北海道の寿都町と神恵内村というところです。


「まちづくり」や地域の活性化に向けてどのような取り組みを進めているのですか。

各地域の電力会社、経済産業局の協力を得ながら、原子力発電所の立地地域の「まちづくり」に協力をさせてもらっています。例えば、専門家を活用した地域課題解決支援では、愛媛県だと「佐田岬の映像コンテスト」などの協力をさせていただいています。 商品開発の取り組みを支援させていただく地域もあれば、地域によっては、漁業が中心なので冷蔵庫を整備するという支援の場合もある。地域の課題はさまざまですので、その地域に合わせた支援を行っています。


出典:資源エネルギー庁HP


高レベル放射性廃棄物の処分地の選定に向けて北海道の寿都町と神恵内村で「文献調査」を進めているとお話ししましたが、この2つの自治体では、最初、高レベル放射性廃棄物の最終処分とはどのようなものなのかを知っていただいてきましたが、今はどうやって「まちおこし」していくのかを検討しています。国からまちづくりに使える交付金が提供し、次の世代を担うまちおこし事業をどのように展開させるのか、一緒になって考えているところです。


出典:資源エネルギー庁HP


<参加者の感想>

・発電とまちづくりが関係していることを知らなかったため、勉強になった。

・実際の取り組みやその取り組みの考えを聞き、メディアからの情報とのすり合わせができたため良かった。

・まちづくりというと観光のイメージが強くなるが、まちの基盤をつくることやこれからを考える事もまちづくりだと気づくことができました。

・大学でエネルギーや持続可能な〇〇の話を聞いていると複数の先生から様々な意見が出たり、SNSでは真反対の意見を目にしたりして結局のところ何が良いのだろうかと考えていたので一度頭を整理する機会になりよかった。

・エネルギーと地域づくりが関係していることを知ることができて良かった。

・話が固すぎず、自由なトークで面白かった。気さくな方でまたお話が聞きたいと思った。

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