教材・セミナー

セミナー

掲載日:2023.3.30

2022年9月に早稲田大学 中村理准教授のゼミの学生5名が、柏崎刈羽原子力発電所を視察しました。

原子力発電所の視察後は、東京都市大学 准教授の牟田仁さんのコーディネートのもと、柏崎市で会社を経営する小林英介さんと「原子力発電」をテーマにディスカッションしました。その様子をご紹介します。



柏崎刈羽原子力発電所を視察した感想


安全対策を徹底していると感じた

私は生まれも育ちも東京で原子力とはほとんど関わりなく生活していた。原子力は効率的に発電して多くの電力を賄えるというポジティブなイメージを持っていた。今回、実際に視察して、想像よりもものすごい人手やコストをかけて安全対策を徹底していることがわかった。コロナで日本の経済が落ち込んでいるので、低廉な電力を供給する必要があると思う。でも、私の考え方は東京で育ってきたという環境に基づいていると思う。首都圏に住んでいる人と原発周辺に住んでいる人で意見が違うので、アプローチを変えていく必要があると思う。


視察をして印象の変化があった

東日本大震災があった当時は小学三年生だった。原子力発電所は事故を起こしたというイメージが記憶に残っていて、原子力は恐ろしいものだというイメージがありました。徹底して事故の防止に取り組んでいる様子を見て、安全で信頼できるものじゃないかと180度くらい印象の変化がありました。


地震や津波などに対しての対策を徹底していた

原子力発電所とは関係のない地域で生まれ育ったので報道の情報でしか知らなかった。これまで福島の事故については怖いなという印象を持っていた。今回の視察で地震や津波などの災害に対しての対策を徹底していることがしっかりと理解できた。


実際に見て印象が大きく変わった

原子力発電に対しては、怖いなどの感情はなく電気はお金を払えば流れてくるものだという意識しかなかった。消費地の人は、電力はただ流れてくるだけのものだというイメージを持っているのじゃないかと思う。今回、こうした印象を持って視察した結果、体験によって感化されたところがあった。知識として原子力などの情報を得ることはあったが、実際に目の前で施設を見たり、二重三重の安全対策を見ると、映像や資料で見ることと、生で見ることは全然違うと痛感させられた。メディアの発信する安全安心の声は自分に響かなかった。実際に目で見てみて施設の安全対策を体験して安全安心という言葉の意味が伝わってきた。見学で原発に対する印象が大きく変わった。





「原子力発電」をテーマにしたディスカッション


コーディネーター
東京都市大学 准教授 牟田仁先生

視察した時の東京電力さんの説明は技術的な話が多くて難しかったと思いますが、視察した感想を伺うと信頼を持てた人が多かったようですね。なぜ信頼できたのでしょうか?




視察によって知識が補完された

技術的な内容を100%理解することはできなかったが、実際に足を運んで原子力発電所を視察できた。視察したことによって、未知のものが既知のものに変わり、漠然とした知識が補完されたことで、得体の知れないものでなくなったという点が大きいと思う。


対策を見て恐怖が払しょくされた

幼いころに見た津波の映像などがトラウマとして残っていた。津波が押し寄せて いろいろなものを壊していくのは衝撃だった。津波によって事故が起こったという記憶が残っていて怖かった。今日、視察して、最新の技術を駆使して事故を起こさないように対策していることを間近で見られた。視察によって恐怖が払しょくされたのだと思う。


学生から小林さんへ質問

Q.原子力発電所を稼働させようとしたときに、地元の住民からはどういった反応があるのでしょうか?


A. 地元の柏崎の住民は冷静だと思います。柏崎刈羽原子力発電所だけではなく、原子力発電所を再稼働するには、政治がしっかりとすることと国民の皆さんのエネルギー問題に関する理解が必要ではないかと思います。もちろん賛成や反対などさまざまな考えがありますが、柏崎には50年も原子力発電所があります。そして、発電所で働いている方やその方の家族もいます。そういった意味で比較的冷静だと思います。


小林さんコメント

メディアは、原子力発電所と地元の経済を結び付けたがりますが、再稼働したからといって、すぐに柏崎の経済が潤うというわけではないと思います。日本のエネルギーセキュリティに関しては、ウクライナ侵攻をはじめとするさまざまな問題があります。日本のためにも、輸入に頼っているエネルギーを原子力を活用してどうにかしたい、柏崎の住民の想いはそこにあるのではないでしょうか。柏崎市は、実は東京電力の管内ではなく、東北電力の管内です。柏崎市の住民は、東京電力ではなく東北電力の電気を利用しているんです。東京電力の電気は使っていない。ここで作られた電気は、全て首都の東京へ送られている。東京の発展のために東京電力とともに柏崎刈羽原子力発電所を運営しているという自負があります。今後、エネルギー問題に関心を寄せ続けていただけると原子力発電所が立地する地域の人間としては嬉しいです。




コーディネーター牟田先生の総括

今日の視察や議論で、皆さんの中で意見が変わった部分、変わらなかった部分があると思いますが、これからも日本のエネルギー問題に関心を持って考え続けていただきたいです。そして、SNSなどで発信したり反応してみるということもよいと思います。皆さんにはそうした意識を持って、国民的な議論のきっかけとなるような行動を起こしていただきたいと思います。

 

このページをシェアする

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

関連記事

PAGETOP