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2020年1月に早稲田大学政治経済学部 中村理先生のゼミ生3名が柏崎刈羽原子力発電所を視察しました。発電所の視察後は北海道教育大学名誉教授 鵜飼光子さんのコーディネートのもと、地元の若手経営者の集まりである柏崎青年会議所の方々にお話を伺いました。
福島第一原子力発電所を過去に視察したこともある彼らには、新規制基準の安全審査に合格した柏崎刈羽原子力発電所の安全性向上対策はどのように映ったのでしょうか。また、地域の方々の原子力発電への想いを聞き、これからの原子力発電や日本のエネルギーのあり方についてどのように考えたのでしょうか。


柏崎刈羽原子力発電所の安全対策を見てどのようなことを感じましたか。

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更なる安全に向けた自主対策があった

柏崎刈羽原子力発電所の視察では、福島第一原子力発電所の事故を踏まえた安全対策が進んでいる姿が見られました。また、それだけで満足せずに、「想定していなかった」ということが言い訳にならないように、更なる安全性向上に向けた自主的な対策がされていました。一方で、東日本大震災を思い出すと、来るはずのない高さの津波が起こり、「想定していなかった」事態が実際に起こったら、本当に大丈夫なのだろうかという不安も少し残りました。


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現状に甘んじない姿勢を感じた

原子炉建屋そのものがある、という点が当たり前ですが、福島第一原子力発電所と異なる景色でした。また、柏崎刈羽原子力発電所では働いている職員の方々は前を向き、これから再稼働に向けて進んでいこうという意識を感じました。 安全対策で安心した点は、中越沖地震、東日本大震災を経て、排気筒などを支える柱が増えているなど安全対策がアップデートされており、現状に甘んじない姿勢を感じたことです。ただ、液状化現象などの目に見えないリスクについては不安に思いました。そういったところの改善はコストもかかるだろうし、どういう風に進めていくのか気になりました。


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透明性を保とうしていた

建設された時代背景の違いもあるかと思いますが、今回視察した柏崎刈羽原子力発電所の6、7号機は見学できるギャラリールートがあり、人に見せることを意識してつくられており、透明性を保とうしていたのだなと感じました。福島第一原子力発電所ではいかに廃炉を進めていくかという雰囲気でしたが、柏崎刈羽原子力発電所では再稼働に向けて設備の補強をするなど先に進めていくという姿勢が見えたことは安心しました。


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これからの日本のエネルギー、原子力発電についてどのように考えていますか。

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他のエネルギーを考えつつ、本当に必要ならば原子力も

立地地域に住んでいない人間が、安全そうだから原子力発電を動かしましょうとは正直言いづらいですが、完全になくさなければならない、なくす必要があるとは思えません。急に今から日本中のすべての原子力発電所を廃炉にしようとなったところで、廃炉にかかるコストもかかりますし、その分を補うエネルギーをどうするかという問題がどうしても出てきてしまうと思います。他のエネルギーを考えつつ、本当に原子力が必要でなくなれば廃炉にするべきだと思いますが、当分は安全性に気を付けながら動かしていけばよいのではないでしょうか。


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一つの不安定なエネルギーに頼るべきではない

今の電源構成の中心は火力発電ですが、化石燃料はとにかく海外に依存しており、経済的な面や、外交的な面からも、一つの不安定なエネルギーに頼るべきではないと思います。そういう意味では原子力発電が必要だと思います。福島第一原子力発電所の事故があったことで国民感情的には原子力に反対の人が多いのが現状ですが、国民一丸となってエネルギーに対する考えを醸成していく必要があるのではないでしょうか。


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他の発電技術にも投資していくような方策を

個人的には原子力発電自体を推し進めようというつもりはなく、他にも手段があるのではないかと考えてしまいます。それでも、原子力から一切手を引いていいのかというと、バランスという観点からは手を引かないほうがよいかと思います。そのため、必要・不必要かで聞かれると必要という立場になるかと思います。 ただ、今の時代の流れからすると、原子力発電を推し進めようという人よりは再生可能エネルギーを進めようという人が増えてきてるで、撤廃はしないけれども、他の発電技術にも投資していくような方策をとっていくことが、今の日本のエネルギー事情を考えると大切なのではないかと思います。



今回の視察、意見交換会はいかがでしたか。

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ただ賛成・反対ではなく時代背景や労働環境など、多面的に原子力について考えられていることが地元の方の話を聞いてわかりました。原子力が今までは身近でなかったため、報道のイメージを正直に受け止めることが多かったのですが、実際に現地に行くことでわかることがたくさんありました。


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原子力発電所がない首都圏で育ってきましたが、首都圏では柏崎刈羽原子力発電所で作られた電気を使っており、他人事ではなく、自分事として考えないといけないと思っていたので、色々な立場の人たちの話を聞くことができて、本当にいい機会になりました。


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大学ではジャーナリズムを勉強しており、リスクがあるようなものに対しての報道はやっぱり難しいところがあると再認識しました。これからもエネルギーと関わることがある身としては、ジャーナリズムと発電・エネルギーについてもう少し勉強しなければならないと感じました。


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地域のみなさまからひと言

私自身も柏崎青年会議所に入ってからエネルギーのことを勉強し始めたので、決して高い知識を持っているわけではないですが、歴史を紐解いてみると、日本は原子力を完全にやっていこうというわけではなく、オイルショック以降に一つの手段として原子力を選択した歴史があります。そのときにも太陽光に多くの投資をしたり、昔から再生可能エネルギーに投資している姿勢はありました。今回、学生の皆さんの意見を聞いて、エネルギーに関してこれだけ意識が高く、熱心に勉強されていることを嬉しく思いました。

(柏崎青年会議所 第64代理事長 長澤博氏)

福島第一、第二原子力発電所も見て、そして今日、わざわざ柏崎まで実際に足を運んでいただき非常に感心しています。私たちも高速道路ができて、新幹線ができてからの恵まれた世代なので、例えば電気が足りなくなったらということは想像がつきません。昨年のホルムズ海峡の危機もそうですが、有事の際への対処法などを想定して、若い皆さんには広く物事を見ていただけたら有難いです。

(柏崎青年会議所 第63代理事長 岡田和久氏)


コーディネーターからひと言

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北海道教育大学名誉教授 鵜飼光子氏
日本のエネルギーについて考えていくことは、自分たちの住んでいる地域、日本全体、そして自らのライフスタイルを形成するうえでも非常に重要なことです。専門家や有名なジャーナリストの話を聞くことも大変重要ですが、基本は実際に自分の目で見て共有して、信頼し合って、話し合うことが必要です。
今回参加した学生3人は視察や意見交換などの貴重な経験ができましたね。社会に出た際には周りの人たちに今回知り得たことを是非とも伝えてください。



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