コラム

笑いは万薬の長

大桑原つつじ園

宇野 賀津子 氏 《(公財)ルイ・パストゥール医学研究センター インターフェロン・生体防御研究室長》


『原子力文化2018.4月号』掲載


大桑原つつじ園



去年の夏、「福島子どもの未来を考える会」ベラルーシ派遣団に同行して、ベラルーシ共和国のズブリョーノック保養施設に行ったことは、すでに2017年の11~12月号で報告した。
一緒に行った中高校生とは、その後報告会で会ったが、報告を聞くと大きく成長したな、と思う子が多数いた。お世話する関係者は大変だろうが、行きっぱなしでなく、報告会を開くというのはとても大事と思った。その一人に、渡邉君がいる。彼は福島県須賀川市にある大桑原つつじ園の26代目である。
初対面の印象はお調子者だったが、その後いろいろな場でその場を盛り上げようとしていることがわかった。お宅は、大桑原つつじ園という観光つつじ園で、300年ほど前の祖先がつつじを屋敷内に植え、シーズンには多くの方が訪れる福島の花の名所という。
彼は、3.11以降、26代目を継ぐことを決意したという。実際、風評被害や自粛モードで、2011年の来園者は前の年の4割程度だったとか。その後、庭園も自己除染をし、今に至っている。ただ、マンネリになっていないか、どうしたら毎年来てもらえるようになるか、ずっと考えていると言っていた。
話を聞くうちに、彼の26代目を継ぐという意思は本物とみた。ベラルーシのズブリョーノック保養施設には、木々の間にハンモックがわたされていた。また、すてきな蔓籠のような椅子もあった。森の中で、その椅子でゆらゆらするのは本当にリラックスできて私のお気に入りの一つであった。
彼は、このように自然の中で優雅に過ごし、リラックス出来る環境をつくるために、ハンモックの導入は、ぜひしたいと言っていた。
実際、帰国後に、つつじ園の中の竹林に広場をつくってリラックスできるようしている他、四か国語のパンフレットも作成中とか。間違いなくベラルーシの経験は彼を成長させたと思った。
つつじというと、京都では長岡天満宮の霧島つつじが有名で、私は5月の連休の初め頃、筍の購入とつつじを見に訪れている。これは私の中では年中行事の一つで、同時期の天満宮周辺のボタン桜、霧島つつじ、(普通の)つつじの咲き具合をみる。今年はちょっと寒くて一斉だったとか、暖かかったから桜は花吹雪だったとかである。
彼の話を聞いて、去年の連休に家族で福島旅行をしたときのことを思った。福島は気温の関係で、一斉に花が咲く。つつじ、シャクヤク、シャクナゲ、藤、はなみずきと一度に見ることができる。この贅沢は、福島に通うようになって、この時期の福島ならではと思った。今年の5月には須賀川まで足を伸ばして、つつじ園を見に行こうと思っている。
彼は最後の日、手ぼうきで集会室を一人で掃いていた。つつじ園を守り発展させていくという決意は、口先だけでなく本物とみた。

(『原子力文化2018.4月号』掲載)

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