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2021年度 課題研究活動 成果発表会レポート

全国の高等学校・高等専門学校から「エネルギー・原子力に関する課題研究活動」に取り組む学校を募集し、応募された18テーマの中から11テーマを選定し、課題研究活動を支援しました。新型コロナウイルスの影響で活動が制限される期間がありましたが、各校が約6か月間の研究成果を取りまとめました。12月12日にはその研究成果を発表する成果発表会を開催しました。各校の発表内容を紹介します。

活動テーマ

【共通テーマ】2050年カーボンニュートラルを達成するためには
【自由テーマ】(各校で自由にエネルギー・原子力のテーマを設定)

最優秀賞

◆ 福井南高等学校   

自由テーマ:意識の差―原子力発電を学校現場から改めて問い直す

       

原子力発電について、福井県内でも地域で意識差があるのではと推測し、県内の高校生等を対象にアンケート調査を実施(1,807名)した。その結果から、原子力発電を意識するきっかけとして、嶺南(原子力立地地域)では「家庭環境」、嶺北では、「授業」、「東日本大震災」の回答が多く、「原子力」のイメージについても、嶺南の方が嶺北よりもポジティブなイメージが多いなど、原子力施設と距離に相関関係があることが分かった。また、カーボンニュートラルについて、8割以上の生徒がよく認知していないことを知った。この調査によって、情報をフラットに伝えることや、「わからない」を共有することから議論の土台をつくることが重要だと感じた。

          

<審査員コメント>
大規模な調査の成功と、得られた研究成果を色々なところへ伝えている。そういった点に敬意を表したい。

<代表生徒コメント>
冊子が完成したのは、アンケート調査に協力してくれた県内の高校生のおかげ。このような賞をいただけてうれしいです。

          


優秀賞

◆飯田女子高等学校   

自由テーマ:微生物燃料電池の実用化に向けて

       

微生物がいる土を使って「泥の電池」を作り、微生物にエサを6種類与え、電圧などの違いを確かめた。「泥の電池」は海沿いでの発電に適しているが、水田が多い飯田市でも有効な発電方法だと考えた。コストがかからず、汚水や汚泥”を”浄化できるメリットがある一方、発電量が小さいデメリットがある。また、微生物燃料電池の実用化に向けてエネルギー・環境問題を考えてもらうために、環境(温暖化)すごろくやチラシを作成し、飯田市民に向けた環境啓発活動や学童訪問などで情報提供を行った。この活動を通じて、子供たちに環境 問題について考えてもらうことが必要だと感じた。

          

<審査員コメント>
自分たちで実験を計画し微生物燃料電池の可能性を探るだけでなく、小学生へのアンケート調査、市民に向けた啓発活動なども、とてもよい取組みです。

<代表生徒コメント>
コロナの影響で計画通りに活動ができなかったが、受賞できてうれしいです。他の学校の活動や発表から学んだことを活かして、今後も頑張っていきたい。



優良賞

◆静岡理工科大学星陵高等学校   

自由テーマ:小水力発電を利用した地産地消のエネルギーミックス

       

温暖化対策として小水力発電に注目し、エネルギーの地産地消を検討した。小水力発電施設の見学では、管理を行う後継者不足、河川のごみ問題などの課題を知った。見学で学んだことを参考に実験では、地域の河川の実態調査と発電効率の良いプロペラの設計・製作し、模型実験を行った。結果は、条件によって発電効率が変化することが分かった。今後も実験を続け、発電効率の良い条件を見つけ出したい。そして、小水力発電の認知度向上に向けた情報発信活動も続けていきたい。

          

<審査員コメント>
昨年度の課題を踏まえていて、活動目的が明確だった。また、小水力発電の知名度向上に向けた情報発信活動をしているのも素晴らしい。

<代表生徒コメント>
すごくうれしい。実験が途中段階なので、後輩に引き継いでいきたい。ありがとうございました。



優良賞

◆京都府立桃山高等学校(風力発電班)   

自由テーマ:古都「京都」発の竹製小型サボニウス・ダリウス型風力発電機

       

これまでの研究・考察をもとに気象条件に適した風力発電機を開発することを考えた。その中で、サボニウス・ダリウス型風力発電機で低風速に適したものに改良することに挑戦。複数のブレードの設計、制作、実験し、それぞれのブレードの回転する力を調べ、より良いブレード形状について検証した。また、ラチェット機構(自転車のギアのような機構)を用い、発電効率を上げる方策も検討した。今後は、自然由来の素材である竹を用いたブレードによる家庭用の風力発電機の普及を目指し、京都をカーボンニュートラルの先駆けとなる都市にしたい。

          

<審査員コメント>
昨年度の成果から発展した内容だった。理論と実験から何が導きだされたかが分かりやすかった。

<代表生徒コメント>
まだ研究が途中段階なので、今後も家庭用の風力発電機の普及を目指して、活動を頑張っていきたい。



◆福島県立磐城桜が丘高等学校(オンライン参加)   

自由テーマ:明るい未来のために伝えなくてはならない情報とは?
〜風評から考える情報の質と伝達手法〜

福島県に関する3.11後の風評被害を知り、福島県の良さをもっと発信したいと考え、インターネットやメディア、コミュニケーションに注目し、それぞれの情報の伝わり方について調査した。インターネット上の情報は、人々の不安をあおるのか、安心させるのかについて、Googleで「福島野菜」などのワードを実際に検索して調査した。調査の結果、ポジティブな意見が9割だったが、その記事が安心に結びつくとは限らず、共感が必要と考えた。また、メディアでは、情報の正確性において、原子力発電の運営側の情報と比較して判断することが重要と考えた。そして、コミュニケーションにおいては、聞き手によって伝え方を変えることが重要と考えた。今後、アンケートなどによりさらなる探求を進めていきたい。

<審査員コメント>
情報の質や伝わり方について多面的・多角的に検討し、何が重要なことか、また課題は何か、そうした要素を明確にして研究を進めていて素晴らしい。

<代表生徒コメント>
初めての参加で賞を受賞できてうれしい。今回の経験を活かして今後も調査活動を続けていきたい。


◆京都府立桃山高等学校(水素利用班)   

自由テーマ:水素利用でどこまで発電ロスを抑えられるか

太陽光発電によって得られた電気を水素に変換し、エネルギーの安定利用が可能かを調べた。実験により太陽光発電で実際に電気分解により得られる水素の発生量や小型燃料電池の性能を調べた。この実験結果をもとに、京都市で住宅に太陽光パネルを設置した場合のシミュレーションを行った。結果は理論値になるが、京都市の電力を賄なえる可能性はあることが分かった。再生可能エネルギーによって発電された電気で水素生成することで安定したカーボンレス発電が可能になり、水素燃料電池を搭載した機械も動かすことができる。また、酸素の工業利用、燃料電池の熱利用などで利用効率を上げることで発電ロスを抑えられることができる。

<審査員コメント>
可能な限りに論理的ステップを踏もうとしている姿勢が強く感じられ、研究プロセスがとても優れていた。

<代表生徒コメント>
活動中は計画通りに進まず、不安な事もあったが、賞を受賞できてとてもうれしいです。これからも研究内容をもっと発展させていきたい。

             
       

◆栃木県立大田原高等学校   

自由テーマ:電力自給率向上を目指して栃木県北部の地域資源に秘められた可能性を探る

大田原市などの県北5市町をターゲットに、アンケート調査や施設訪問などにより、課題の把握とシミュレーションを行い、地域資源の可能性を探った。県北部は県の牛(乳用牛、肉用牛)の飼養頭数の半数を占めている。そこから排出される糞尿をバイオマス発電として利用した場合、バイオマス発電だけで地域のエネルギーを賄うためには、現在飼育されている牛が73,300頭であるのに対し、約430万頭が必要と算出した。このシミュレーションの結果から、バイオマス発電のみので、県北5市町の必要電力を賄うことはかなり厳しいことが分かった。このことから、エネルギーの安定供給にはバイオマス発電と他の発電技術を組み合わせたエネルギー供給と節電などが必要であることが分かった。

<審査員コメント>
昨年度に続き目的が明確で、ヒアリングを通して課題を見つけ、対応策を示していた点が良かった。

<代表生徒コメント>
今回の研究の活動を生かして、今後もさらなる地域資源の発展や活用方法を見出していきたい。



◆愛媛県立新居浜工業高等学校(オンライン参加)   

自由テーマ:四国のエネルギーバランスを考える。〜電力逼迫の解消をするために〜

四国地域の電力供給のひっ迫原因を調査した結果、寒波による暖房需要の増加、伊方発電所の停止と石炭火力のトラブルによるものと知った。安定供給においては日本のエネルギー自給率、各発電における課題があり、水素などの新しいエネルギー開発も必要であると考えた。しかし、原子力発電に対する反対意見も多くある。そこで、安全性の高い小型原子炉を取り入れることを提案したい。さらに、新たな発電技術の開発に期待したい。


◆京都府立鴨沂高等学校   

自由テーマ:太陽光発電に関する特性と今後の展望

太陽光パネルは、天候や障害物による遮へいにより安定した電力の供給ができないことが実験で分かり、太陽光発電を発電の主力にするのは難しいと判断した。そこで、新たな発電方法として振動発電、音力発電に注目し研究を行った。発電効率は低いが、適切な場所に設置すれば太陽光発電を補う発電技術として活用できると考えた。しかし、エネルギーのベストミックスを考慮すると、再生可能エネルギーや新しい技術と合わせて原子力発電所の利用は必要である。

       

◆東海大付属諏訪高等学校   

自由テーマ:小型風力発電機の逆襲〜発電機の選択肢拡張に向けて〜

CO2の排出量を減らすため、再生可能エネルギーに期待が寄せられており、代表的なのは、太陽光発電である。しかし、どの発電技術にもデメリットはあるため、1つの発電方法に頼ることには問題がある。そこで、日照時間・温度の影響を受けない、小型風力発電機を用いることで太陽光発電のデメリットを補えるのではないかと考えた。気象庁の気象データを用いてシミュレーション実験を行い、小型風力発電機の性能把握を行った。実験の結果、小型マルチローター風力発電がクリーンで頼れるエネルギーになること が分かった。

       

◆福島工業高等専門学校   

自由テーマ:福島第一原子力発電所ALPS処理水の行方

ALPS処理水の海洋放出についてアンケート調査を実施。結果は、約6割が賛成だったが、福島県産の農産物・海産物の購入の有無については、放出後は放出前の87%〜70%に減少するという結果となった。風評対策として、「モニタリング、情報発信等への第三者の介入」、「小中高生の放射線、風評に関する知識普及」、「目、耳に入る形での情報発信」などが必要ということが分かった。




高校生動画「2050年カーボンニュートラルを達成するためには」

課題研究活動に参加した高校生が今回の活動を通して得た知識や研究結果などから、共通テーマ「2050年カーボンニュートラルを達成するためには」について、自分たちの意見や考えを高校生ならではの見せ方で約3分の動画にまとめました。


<動画一覧はこちらから>


<動画制作の感想>
・3分という短い時間で伝えたい内容どうやってまとめるか、動画構成を考えるのが大変だった。
・どのようにすれば、カーボンニュートラルを分かりやすく伝えられるか考えるのが大変だった。
・他人に興味を持ってもらうにはどうしたら良いのか考えるのが難しかった。


課題研究活動に参加した感想

・カーボンニュートラルやエネルギーに対する関心が高まったので、今後、ニュースなどで見かけたら 気にするようにしたい。
・自分が想像していたものをはるかに超える素晴らしい発表ばかりで、とても刺激された。今後は今回 学んだことを活かし、さらに探究をしていきたいと思った。
・実際に人前で発表して、他校の発表を聞くと、話の内容がよく入ってきた。今年は施設見学も 行くことができて、より多くの正しい情報を得ることができた。



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