解説

その他

日本の放射線教育の経験に注目が集まる
~IAEAプロジェクトから見える日本の放射線教育~


背景には、2012年から行なわれている国際原子力機関(IAEA)のプロジェクト「アジア/太平洋地域の持続性と国立原子力研究機関のネットワーク化支援活動」における、東京大学の飯本武志准教授の取り組みがあります。飯本さんはプロジェクトの中で、放射線教育における豊富な経験に基づき、丁寧な指導を5年間にわたって、アジア各国で行なってきました。
このプロジェクトを通して、日本の放射線教育がどのように評価されているかをご紹介します。


日本の放射線教育では、テキストや動画を使った学習だけでなく、教育用簡易放射線測定器「はかるくん」を使った環境放射線量の測定、「霧箱」での放射線の飛跡の観察など、実体験として放射線を感じることができる実験が実施されています。
現在、原子力科学技術は、原子力発電以外の分野でも、世界中で活用されています。特に、アジア太平洋地区では、医療や産業活発化に伴う放射線利用の増大や、エネルギー確保の有力なオプションとして、注目されています。アジア各国では、このような原子力科学技術への興味がモチベーションとなり、人材育成と国民理解に向けた教育への関心が高まっています。
IAEAは、中等学校(セカンダリースクール)への原子力科学技術分野の導入を計画している加盟国への支援を進めており、このプロジェクトでは原子力科学技術をすでに確立しているIAEA加盟国の経験や知見を集約し、アジア各国へ活かすことを目的としています。
集約された情報は「コンペンディアム」としてまとめられ、これを試験的に導入するパイロット国としてインドネシア、マレーシア、フィリピンとアラブ首長国連邦(UAE)の4か国が最初に手をあげ、2016年からタイ、スリランカが加わりました。


意見交換

今年2~3月、インドネシアで開催されたプロジェクトの総括会合での意見交換


日本の放射線教育プログラムが国際的に高い評価


本プロジェクトで、飯本さんは「WOW Factor(驚き、感動、新たな発見)」を取り入れた2時間の日本型放射線教育プログラムを紹介しました。この中の「はかるくん」、「霧箱」などの実験が、前述のUAEを除いた5か国のパイロット活動で導入され、教材の質の高さや現場での取り入れやすさが、参加各国から高い評価を受けました。
また、IAEAから日本だけに特別に感謝が述べられるなど、国際社会における日本の存在感が示されました。
2018年からは活動を拡大させた第2期プロジェクトがはじまります。日本の放射線教育のさらなる向上と、その経験の共有に引き続き高い期待が寄せられています。

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