解説

ニュースでよく聞くあのはなし

ニュースでよく聞くあのはなし「カーボンニュートラル」って?

「そもそも」が口ぐせ★ニュースに詳しい♪「そもそも姉」がザックリ解説!
 
掲載日2022.1.7


静止画のダウンロードはこちら



WEBでしっかり解説!「カーボンニュートラル」って?

地球温暖化防止のためにCO2(二酸化炭素)の排出を少なくしようと叫ばれていますね。日本では2020年10月の臨時国会にて菅総理(当時)が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。カーボンニュートラルとはCO2の排出を「無くすこと」や「少なくすること」とどう違うのでしょうか?


(1)地球温暖化はCO2のせい?

地球が温暖化する根本的な原因は、「温室効果ガス(GHGガス)」を産業や生活の中で排出しているためと言われています。ところで「温室効果ガス」とはCO2以外にも「メタン」「一酸化二窒素(N2O)」「フロンガス」などがあります。そのなかでも温暖化の主な原因として考えられているのがCO2なのです。

さて、CO2は産業や生活のあらゆるところで排出されていますが、我々の生活に欠かせないエネルギーを生産するために排出されているCO2の量が圧倒的に大きいのです。

GHG排出量

「国立環境研究所 2019年度の温室効果ガス排出量(確報値)について」より作成



(2)温暖化するとどうなるの?

最近、日本を襲う台風やアメリカのハリケーンが大型化しているという話を聞いたことがあると思います。大型台風により電柱が倒れたり、送電鉄塔が倒れたり、家屋の屋根が吹き飛んだり、大きな船が強風に流されてしまったりと日本でも大きな被害が報告されていますね。

地球が温暖化するということは単に「暖かくなる」と言うことでは無く、気候自体を変化させてしまうことになるのです。台風やハリケーンの大型化だけではなく、食料生産(農業や漁業)への悪影響、豪雨の発生、氷山や氷河が溶けてしまうなど、生活に大きなダメージを与えることが知られています。南極大陸の氷が溶けて海へ流入することにより、海面が上昇して多くの島が無くなると予想されています。 これは、豊かな生活の代償として我々が対策しなければならない大問題なのです。もちろん人間生活だけではなく、地球上に生息しているあらゆる生物に対してその存在を脅かす深刻な問題と言えるでしょう。



(3)CO2を出さないことは不可能でしょうか?

CO2が温暖化の最大の原因であり、それを生み出しているのが発電(石炭火力、石油火力、天然ガス火力など)や動力の発生(自動車、船、飛行機など)、熱供給(製鉄、セメント製造、暖房など)などのエネルギー利用が原因である事が分かっているのなら、CO2を出さない「ゼロカーボン」のエネルギー利用はできないものでしょうか?

まず、発電に関してはほとんどCO2を出さない発電方法もあります。それは再生可能エネルギーによる発電です。バイオマス発電や太陽光発電、風力発電などの「ゼロエミッション電源」がその例です。また、原子力発電もほとんどCO2を出しませんのでゼロエミッション電源と言えます。
ちなみに、「ほとんど出さない」と言うのは、発電に必要な設備の建設や燃料輸送などの段階では化石燃料を利用し、CO2を出しているからです。
また、多くの再生可能エネルギーは、発電が不安定で十分な量のエネルギー供給を保証してくれませんので、全てを再生可能エネルギーによって賄うことは非常に難しいと言われています。



(4)CO2を出した後で回収すること(カーボンニュートラル)

化石燃料やバイオマス燃料は燃やす限り必ずCO2を発生します。
しかし、この二つは地球温暖化の面からは大きく異なります。

まず化石燃料は主に3億年程度昔の石炭紀と呼ばれる地質年代に、地球上に繁茂した植物が地中の熱と圧力により炭化したもので、燃焼させて発生するCO2は当時植物によって固定化*された炭素(C)です(ちなみに酸素(O2)は植物により大気中に放出されます)。
一方、バイオマス燃料に含まれる炭素(C)はここ数年間に成長した樹木が吸収・固定化*したものです。

* 大気中から吸収した二酸化炭素(CO2)を炭素(C)の形で蓄積・貯蔵する状態



樹木によるCO2の吸収により、植物成長の営みは続きますので、バイオマス燃料を燃やして発生したCO2は数年後再び樹木により吸収されると考えられます。このことを「カーボンニュートラル」と言います。すなわち、バイオマスから放出されたCO2は再度吸収される保証があります。
しかし、化石燃料が燃焼して放出されたCO2は吸収される保証がありません。植物がもう一度石炭になるためには数億年の年月が必要です。

また、化石燃料により放出されたCO2も何らかの方法で回収することが出来れば、それもまた「カーボンニュートラル」となります。このように化石燃料の燃焼により発生したCO2を再度回収する技術開発もまた進められています。



【監修】 株式会社 ユニバーサルエネルギー研究所 代表取締役社長 金田 武司 氏

工学博士。東京工業大学大学院エネルギー科学専攻博士課程修了。(株)三菱総合研究所勤務を経て、2004年(株)ユニバーサルエネルギー研究所を設立。2018年8月に新著『東京大停電』を出版。

このページをシェアする

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

関連記事

PAGETOP