コラム

笑いは万薬の長

抗酸化能を実感する実験― 「腑に落ちる」ことは実践につながる ―

宇野 賀津子 氏 《(公財)ルイ・パストゥール医学研究センター インターフェロン・生体防御研究室長》


(『原子力文化2014.12月号』掲載)

抗酸化能を実感する実験― 「腑に落ちる」ことは実践につながる ―



低線量放射線の影響が、かなりの部分、身体を構成する水に放射線があたって分解され出てくる活性酸素によると理解した時、それを克服する生活は? と考えて、即、抗酸化食を思いました。それなら、私が今まで研究してきたがんの再発を予防する食事や、ライフスタイルを紹介すれば良いと思い、3.11以降発言しだして今に至っています。
がんや成人病を予防する食事といえば、有名なものとして、1977年に出されたアメリカのマクガバンレポートがあります。これはアメリカの食生活を「諸々の慢性病は肉食中心の誤った食生活がもたらした食原病であり、薬では治らない」とし、大量の脂肪、砂糖、食塩が心臓病、がん、脳卒中など命を奪う病気に直結していることを指摘しました。
続いて1990年より、アメリカ国立がん研究所がデザイナーフーズ計画を実施、アメリカのがんによる死亡率減少に貢献しました。通常の身体機能維持には必須ではないものの、健康によい影響を与える、植物由来の化合物「フィトケミカル」を特定して、これらの摂取を推奨しました。含有食品として、にんにく、キャベツ、甘草、大豆、ショウガ、セリ科の植物や、お茶、ウコン、玄米、全粒小麦、亜麻、柑橘類果実、トマト、ナス、 ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー等があげられています。
これらは活性酸素による害を消去する成分を含む食物です。カロテノイドやポリフェノールやビタミンC、Eは、そこに含まれる代表的成分で、強い抗酸化作用を持っていて、がんの抑制にも重要な役割を果たします。福島にも身近にあります。ただこれらを表にして紹介しても、どうも皆さんそうですね、で終わってしまうように感じられました。
実感してもらうには実験と考え、要するに還元力を測定できればと、うがいで使うイソジン液を50倍に薄めて、色々な野菜や果物の搾り汁を入れました。ものによっては瞬時に色が透明になります。特に緑茶のパワーはなかなかのもので、一番茶より熱いお湯で入れた二番茶の方が、よりパワーがあります。ぶどう、ミニトマト、大根おろしの搾り汁、ニンニクなどを入れると、イソジンの色が消えます。
抗酸化能の高い食品を食べようと言うだけでなく、実験をして瞬間に色のかわるのを目撃した瞬間、ああ、こんなものを食べれば良いとの確信につながりました。意外と身近にあるではないか、参加者の腑に落ちた瞬間です。この実験は子どもたちにも受けて、中には夏休みの宿題でやって、優秀賞をもらったという強者も出てきました。

(『原子力文化2014.12月号』掲載)

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