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火山が噴火しそうな時は、原子炉を停止するの?


ニュースがわかるトピックス

2018年9月27日


原子力発電所の火山対策として、原子力規制委員会の新規制基準では、半径160km圏内の火山を調査して、火砕流や火山灰などの到達の可能性、到達した場合の影響を評価し、防護措置を講じることを要求しています。

例えば、九州電力(株)の川内原子力発電所については、周辺のカルデラ火山(※1)などを対象に、巨大噴火(※2)の活動間隔や最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況などを総合的に評価するとともに、約3万年前以降の最大の噴火である桜島薩摩噴火(約1万2800年前)も考慮して審査が行われました。その結果、「発電所の運用期間中に、設計対応のできない火山事象が発電所の安全性に影響を及ぼす可能性は十分小さい」と判断して、原子力規制委員会は2014年9月に原子炉設置変更を許可しています。九州電力(株)は、川内原子力発電所の再稼働後も、安全性に影響を与える可能性のある火山について継続的にモニタリングを行っています。

原子力規制委員会は、こうした事業者が行う火山活動のモニタリングによって異常な状況が認められた場合には、必要な判断・対応をとることになります。その基準となる考え方や火山学上の知見を整理するため、外部専門家などで構成する検討チームが設置され、2015年7月に提言がまとめられました。その中では、「対象火山の観測データが変化した時点で安全側に判断する。異常検知の限界を考慮して、“空振りも覚悟のうえ”で安全側にたった判定を行い、処置を講ずる」といった考え方が示されています。

こうした提言も踏まえ、原子炉の停止などを判断する目安について、原子力規制委員会の諮問機関である原子炉安全専門審査会の原子炉火山部会による審議が行われ、2018年8月に開かれた第4回目の会合で、次のような基本的考え方についての案が示されました。


※1 カルデラ火山:火山活動などによってできた大きな窪地で、非常に大きな規模の噴火が起こる
※2 巨大噴火:地下のマグマが一気に地上に噴出し、大量の火砕流によって広域的な地域に重大かつ深刻な災害を引き起こすような噴火で、噴火規模としては火砕物の総噴出量が数10km3を超えるような噴火



原子炉停止などの目安


目安1     早期警戒のための安全側にたった(巨大噴火に至らないかもしれないが、念のための)目安
⇒複数の監視項目における観測データにおいて、平常時の火山活動とは異なる兆候を継続的に示している場合には、原子炉の停止の指示について検討する。
※今後も原子炉火山部会による審議が続けられます。
目安2     巨大噴火が差し迫った状態と考えられるモニタリングデータが得られた段階
⇒設計対応のできない火山事象が発電所の安全性に影響を及ぼす可能性は十分小さいとする前提条件が失われたと判断される場合、または、巨大噴火が差し迫った状態と考えられるモニタリングデータが得られたと判断される場合には、燃料体の発電所からの搬出の指示について検討する。
※現代の火山モニタリング技術で巨大噴火の発生に至る過程を捉えた事例がないことから、火山専門家のコンセンサスを得て、かつ短期間で作成することは困難であるため、中長期課題と位置付けられています。


監視レベルの段階設定


巨大噴火は、マグマ溜まりの成長、広域的な地殻変動、火山性地震の増加、および火山性ガス放出量の増加などを経て噴火に至る可能性があると考えられることから、原子力規制委員会による監視レベルを、「通常」、「注意」、「警戒」、「緊急」の4段階とし、段階の進展に応じて監視頻度の増加などを検討する。


原子炉停止などの判断


原子力規制庁が、監視項目における観測データがあるレベルに達したと認定した場合、原子力規制委員会は、地質学的観測事象(噴火規模、降灰、火砕物密度硫、噴出物)や地球物理学的観測事象(地震活動、地殻変動、火山ガス)なども考慮して、原子炉の停止などを判断する。


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