コラム

むずかしいからきいてみた

SNSで話題!! 全国の「電力系統マップ」作者に誕生秘話を聞いてみました

掲載日:2022.11.30

#むずかしいからきいてみた

#エネルギー × “ 〇〇〇〇 ”

   

なるほど!と思う話題、エネルギーにまつわる雑学、ちょっと誰かにシェアしたくなるエネルギーの話をあらゆる方向からご紹介するこの企画。  

第2回のテーマは「エネルギーד地図”」です。

 

日本全国に張り巡らされている電線。実は、電力系統がエリアごとに分かれているのですが、その全国の電力系統をまとめたマップがSNSで話題になっています。今回は全国の「電力系統マップ」を制作された、加藤さんに制作秘話をうかがいました。

   

SNSで話題の全国の「電力系統マップ」とは?

ネオンカラーがとてもきれいな「電力系統マップ」は2022年4月、Twitterアカウント「地図とかデザインとか(@chizutodesign)」の加藤さんが投稿したもの。その傑作ぶりからまたたくまにツイートが拡散され、2022年11月現在ですでに3万を超える“いいね!”を獲得しています。

   

電力系統マップ

   

小さいころから、“送電線ってどこまでつながっているんだろう?”と気になっていました。最初は東京電力管内だけの電力系統マップをTwitterに投稿したのですが、多くの方から反響をいただいたこともあって今回その全国版を作ってみました。

-加藤さん

 

Twitterでの反響

● 素晴らしいマップです。お疲れさまでした!

● ご苦労様でした。じっくり見るのも時間がかかりそうなほどの情報量。凄い資料ですね、勉強になります。

● 素晴らしいです。私はずっと電気がどこから来るのか気になっていました。

● 仕事柄、電力系統図を見ることがありますが(データセンター絡み)、これを1枚に詰め込んだって凄い!感服しました。

   

このマップは電力会社などが公表している資料をもとに制作され、完成までにかかった期間はなんと2年。複雑な送電網を1枚の画像に収めるのには、とても苦労されたそうです。

 

東京や大阪などの都市部では、送電線が網の目のように敷かれています。密集している地域とそうではない地域のバランスをとるのがとても大変でした。

-加藤さん

 

なお、マップに掲載されている送電線は、各エリアにおいて「電圧が高い上位2種類の送電線」です。一口に電線といっても電圧ごとにさまざまな種類があり、例えば、東京電力管内では500kVと275kVが上位2種類となっていますが、北海道電力管内では27kVと187kVとなっています。

   

全国の電力系統マップからわかる電力のあれこれ

さらに、この電力系統マップを詳しく見てみると、いろいろなことがわかります。

 

例えば、基本的にはエリアごとに電力網が敷かれているのですが、各エリア間は青い線(電源開発発送変電ネットワーク)でつながれています。このネットワークによって地域間の電力連系がとられており、電力を広域で運用できる仕組みとなっているのです。

 

そのほかにも、発電所が海沿いに多く立地していることがわかったり、自分が使っている電気が主にどこからきているのかがわかります。マップを眺めているといろいろな発見があっておもしろいので、じっくりと見てみてください。

また、本州中央に引かれている灰色の線も、日本の電気事情を知る上で見逃せないポイントです。これは「周波数の境目」を表す線で、実は東日本(50Hz)と西日本(60Hz)では電気の周波数が異なります(具体的には、静岡県の富士川と新潟県の糸魚川が境界になっています)。

 

このようになったのは電気事業がスタートした明治時代、東日本ではドイツ製の50Hzの発電機、西日本ではアメリカ製の60Hzの発電機が普及するようになったのが由来といわれています。その名残が現在にも残っており、日常生活で使う家電製品にも特定の周波数でしか使えないものが存在します。違う周波数の電力で作動させてしまうと、故障や事故につながることもあるのでぜひ覚えておきましょう。

   

全国の電力系統マップ以外だけじゃない!そのほかの作品もご紹介

Twitterアカウント「地図とかデザインとか(@chizutodesign)」では、加藤さんが作ったさまざまな作品が投稿されています。どれもおしゃれで洗練されたデザインになっており、ぜひその一例をご覧ください。

   

江戸時代(1840年頃)の関東周辺の旧街道地図

   

元素周期表

   

未来の高速道路マップ2100

   

東京終電マップ

   

これらの作品はどれも休みの日などを使って制作されたものだそうです。いずれの作品も個人の趣味の域を超えている力作で、旧街道図や終電マップなどアイデアもとてもユニークです。

 

ふとした瞬間に思いついたり、こういう地図があったらいいなというのを具現化してみたり、アイデアの着想はさまざまです

-加藤さん

 

ちなみに、加藤さんは普段からグラフィックデザイナーのお仕事をされており、尊敬するデザイナーは「亀倉雄策さん」。1964年開催の東京オリンピックのポスターやNTTのロゴなどを作った日本を代表するデザイナーさんで、シンプルさのなかに力強さを感じさせるデザインが特徴です。

 

そして、“将来デザイナーになりたい”という学生さんへのアドバイスもお聞きしました。

 

いろいろな作品やデザインを見て、どんどん吸収することが一番大事だと思います。また、国語や社会など学校の勉強も仕事で役に立つことが多いので、ぜひ学業もおろそかにしないでほしいです

-加藤さん

   

身近な電気について改めて考えてみよう

私たちは日々の生活のあらゆる場面で、エネルギーを使っています。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、スマホなど、普段何気なく使っている電化製品も電気がなければ当然使えません。

 

最近では、電力需給ひっ迫や節電を呼びかけるニュースなどをよく目にします。2022年11月に政府は「12月1日から来年3月31日まで、各家庭や企業に対して節電要請を行う」ことを発表しました。この冬も、電力需給が厳しくなる見通しとなっており、無理のない範囲で一人ひとりが節電の取り組みを意識することが大事です。

今回ご紹介した全国の「電力系統マップ」は、私たちが普段使う電力はどこからきているのか、電気のありがたさや、私たちにできる節電対策について、改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか。

       

ライタープロフィール

小林悠樹/フリーライター。一橋大学卒業後、冷食メーカーに勤務。2016年脱サラし、宮古島へ。

22年さらなる刺激を求めてポルトガルへ移住。著書は『移住にまつわる30の質問』(キッカケ出版)

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