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高速増殖炉を含めて、日本は核燃料サイクルを確立していくべきだ

2014年2月24日


profile

浅沼 徳子 氏(あさぬま のりこ)
東海大学工学部原子力工学科 准教授


神奈川県生まれ。2001年東京工業大学理工学研究科原子核工学専攻博士課程を修了後、研究所や大学で博士研究員、いわゆるポスドクとして研究に従事。2006年東海大学専任講師として着任、2010年より現職。専門は、使用済核燃料の再処理や廃棄物処理を中心とした核種分離。大学では、放射化学など放射線や放射性物質の取り扱いに関わる講義を担当。日本原子力学会に所属し「将来世代のための再処理技術」研究専門委員会の幹事を務める。



福島第一原子力発電所事故で国内の全ての原子力関連施設は新規制基準に沿った安全対策を進めています。

「核燃料サイクル」の中核を担う青森県六ヶ所村の「再処理工場」でも、本格稼働を延期し安全性の確認をしています。

今回は、この「核燃料サイクル」の基本的なことから、その意義や役割について東海大学の浅沼先生にお聞きしました。



── まず、「核燃料サイクル」とは何かについて教えてください。


浅沼 ウラン鉱山から取り出されたウランが原子力発電所の燃料として使われますが、一度発電所で使われた後の燃料の中には、まだウランやプルトニウムが残っています。そこで、そのウランと燃料の中に新しく生まれた「プルトニウム」という物質を取り出し、再び燃料として使われます。このように、ウランのたどる道程が輪のようになることから「核燃料サイクル」と呼びます。


天然ウランには、ウラン235と238の2種類が存在していますが、核分裂によってエネルギーを放出するのはウラン235です。天然のウランには、ウラン235はわずか0.7%しか含まれていないため、これを原子力発電所(軽水炉)の燃料として使用するにはウラン235の成分を3%~5%くらいまで高めなければなりません。


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核燃料サイクル
以下全図表(出典:原子力・エネルギー図面集2013)



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天然ウランと濃縮ウラン



そのため、ウランを気体状のフッ化物にして「濃縮」をします。その後、固体状の酸化物にし、円柱形の小さなペレットの形にして、それをいくつも入れた燃料棒にします。さらにそれを何本も一緒にした燃料集合体にしてから原子力発電所の中に入れます。


使用していない新しい燃料は、原子炉の炉型によっても多少違いますが、ウラン235が3〜5%くらい、残りが核分裂しない238です。ウランが核分裂を起こすと莫大なエネルギーが出るので、そのエネルギー(熱)で水を水蒸気に変え、タービンを回して電気を起こします。


原子炉で使用した燃料(使用済燃料)には、93〜95%のウラン238と3〜5%の核分裂生成物、1%程度のプルトニウム、それと、燃え残りの約1%ウラン235が含まれています。


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ウラン燃料加工工程



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発電前後でのウラン燃料の変化(例)



プルトニウムは、ウラン238が中性子を吸収して1%程度生成されます。このプルトニウムも核分裂を起こす燃料としてまだ利用できます。


使用済燃料の中で燃料として再利用できない、「核分裂生成物」の割合は1トンのうち30〜50キロ程度です。その他950〜970キロは、原子炉の中に戻して燃料として再び利用できる成分です。


日本は石油や天然ガスなどのエネルギー資源がほとんどありません。役目を終えた使用済燃料ということで全て処分するのではなく、化学的に処理をしてウラン、プルトニウムを回収し、もう一度原子炉の中で燃料として利用するというのが核燃料サイクルの考え方です。


ウラン、プルトニウムを化学的に処理して回収する工程が「再処理」と呼ばれ、「核燃料サイクルの要」と言われています。そして、回収されたウラン、プルトニウムを含んだ新たな燃料がMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)で、これを軽水炉の中に戻して燃やして使っていこうというのが「プルサーマル」という計画です。


私は、再処理の研究をずっと行ってきているせいもありますが、個人的にはやはり「高速増殖炉」()に燃料を回すことが理想的だと思います。プルトニウムを増やし、再処理も行って半永久的にウラン、プルトニウムの燃料を日本の国の中だけでサイクルしていくのが理想的だと思います。


高速増殖炉を含めた核燃料サイクルが確立されるまで、余剰に出てきてしまうプルトニウムをプルサーマルによって、有効に活用していくことになりますが、できれば高速増殖炉も含めたサイクルにしていくことが理想だと思っています。


※高速増殖炉/今の原子炉(軽水炉)よりも高速の中性子を利用するため、燃料中の燃えないウラン238を燃えるプルトニウム239に変える割合が大きくなり(増殖する)、消費される燃料より多くの燃料を生みだすことができる原子炉



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核燃料サイクル(FBRを含む)

 



再処理して、再利用することでもっと効率的に燃料を使い尽くせる



── 核燃料サイクルの要となる再処理工場は、どこにあるのですか。


浅沼 国内では、再処理を行う施設が2つあります。1つは日本で最初にできた茨城県・東海村の(独)日本原子力研究開発機構にある東海再処理工場です。使用済燃料の処理をした経験があり、膨大なデータを持っている研究所です。


現在、日本で初めての商業用の再処理工場として注目されているのが青森県六ヶ所村にある日本原燃(株)の再処理工場です。こちらはまだ稼働していませんが、昨年の12月に施行された核燃料サイクル施設の新規制基準に合わせて安全審査が行われていますので、安全が確認されてから竣工を目指すことになります。


なお原子力発電所の燃料をつくる施設はいくつか国内に点在していますが、再処理工場は東海村と六ヶ所村だけです。


── なぜ日本は核燃料サイクルを進めようとしているのでしょうか。


浅沼 もともと日本にはエネルギー資源がありません。しかも、現在日本の原子力発電所はすべて停止しているので、原油や天然ガスの輸入に大きく頼っており、日本全体として燃料を購入するための出費が非常に多くなっている状況です。原子力発電には、放射性廃棄物などの問題はありますが、エネルギー密度が非常に大きいため、わずかなウラン燃料で膨大なエネルギーを取り出すことができます。3.11の津波の影響により原子力発電所の事故が起きましたが、それまではきちんとコントロールできる状況の中で原子力発電を利用してきました。


使用済燃料を再処理して、再利用することでもっと効率的に燃料を使い尽くせるので、国としては核燃料サイクルに取り組んでいきたいとの思いが強いのだと思います。


ただ、大きな事故が起きた後で、「これからも今まで通り核燃料サイクルを続けます」と一言ではなかなか言い切れない部分があるかもしれません。

 

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原子燃料サイクル施設の位置



有用な資源を取り出してリサイクルすることに意義がある


── 再処理すると廃棄物の量を減らすためにもよい、とも聞きますが。


浅沼 使用済燃料を再処理して、ウラン、プルトニウムを分けた残りの部分、3~5%程度の核分裂生成物などは高レベル放射性廃棄物となります。高レベル放射性廃棄物は使用済燃料をリサイクルすると、必ず出てきます。逆に言うと、リサイクルをしなければ、燃料の中に留まっていて出てこないものです。ですから、高レベル放射性廃棄物を減らすという観点で使用済燃料を再処理するということはありません。あくまでも有用な資源を取り出してリサイクルすることに意義があるのです。


高レベル放射性廃棄物の中に含まれるアメリシウム、キュリウム、ネプツニウムという元素は、ウランよりも原子番号が大きく、自然界には存在しない元素です。半減期()が非常に長くて、放射能がなかなか下がらないため、廃棄物を人間が管理できるかどうか、また地層処分しても何千年、何万年という単位で環境への放出が起こらないかが議論になっています。こうした核種の一部は高レベル放射性廃棄物から分離して中性子をぶつけると、核分裂を起こして、もっと半減期の短い原子番号のものに変えることができますので、これからの再処理は、分離して核変換をして、ゴミ(高レベル放射性廃棄物)になる部分の放射能レベルを下げようという努力がなされています。


※半減期/放射性物質(放射能)が半分になるまでの時間


現在、本格稼働を目指している再処理工場では、核分裂生成物を全てガラスと混ぜて固化体にして処分するのですが、将来の再処理は、地層処分をする核種、少し保管しておけば放射能レベルが下がる核種、核変換で半減期を短くする核種というように目的に応じて分類して行く流れが世界的にもあります。そのまま再処理せずに埋めてしまう(直接処分)ということではなかなか理解が得られませんからね。



── 世界の主要国では、核燃料サイクルにどう取り組んでいるのでしょうか。


浅沼 世界ではフランス、イギリス、ロシアなどが再処理工場を持っていますが、現在でも順調に稼働させています。


フランスや日本のように原子力を利用しようという国に関しては、ウランとプルトニウムだけを回収するというサイクルではなくて、有用金属を分離回収したり、長半減期核種、特にアメリシウムの分離核変換まで考えたプロセスをつくろうとしています。


特に原子力大国のフランスは、廃棄物の減容や有害度の低減を主要テーマとして打ち出して、アメリシウムなどの核種の分離核変換まで含めて高速炉の開発を進めていこうとしています。


フランスなどは、日本で大きな事故があったからといって今までの路線を大きく変えることにはなっていません。


ドイツのように「原子力は利用しない」ことを打ち出している国もありますが、ヨーロッパは地続きですので、EU域内から電力を調達でき、エネルギーの需要をうまく賄える背景があるので、撤退を決めることも可能だったのでしょう。ただ、ドイツではまだ原発は全て停止させたわけではなく、9基稼働中です。


イギリスには、日本は再処理してガラス固化体をつくってもらったりしているので、現状の2プラントはそのまま維持して処理は進めるのでしょう。


ロシアは、高速炉なども含めて建設中というデータが出ていますので、使用済燃料を再処理して技術開発を進めていきながら使っていくという方向だと思います。


アジアでは、特に中国や韓国、インドは、使用済燃料を再利用することに関してかなり積極的です。韓国は、乾式再処理法と言って溶融塩を使った方法で進めていくことを明確に打ち出しています。核保有国の中国、インドは、国策として核燃料の処理をどんどん進めることに対して懸案事項が少ないのか、比較的「利用していこう」という方向で動いているように見えます。



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世界の再処理工場

 

原子力を使い始めた日本は責任をもって最後まで取り組むべき


── 高速増殖原型炉「もんじゅ」がストップしている状況ですが、今後の日本における核燃料サイクルの果たしていくべき役割は


浅沼 原子力に賛成できないという人のあげる理由として、高レベル放射性廃棄物の処分場が決まらないという問題がかなり大きな割合を占めると思います。


処分場が決まらないことを理由に原子力を利用しないということであれば、今すぐにでも原子力は停めるべきだと思います。というのは、原子力発電所を動かせば使用済燃料は出てきてしまうし、その使用済燃料をどう管理し、どう処分していくかもあわせて考えていかなければならなくなってしまうからです。


私自身が一番困るなと思うのは、「もうやめてしまおう」という産業、分野には人がなかなか集まってこないということです。今、大学の教員をしているからこそ、なおさら実感するのですが、人が集まってこないと、今後どうしたらいいか考えたり、研究開発、技術開発も含めて一番問題になる部分をしっかり最後まで面倒を見る人が途絶えてしまうのです。 


ですから、原子力を使い始めた日本は責任をもって最後まで取り組むべきで、原子力を使い続けることが義務だと思います。核燃料サイクルも、軽水炉の中でウランを回しているだけでは現状ある資源をそのまま消費していくだけです。「なるべく有効利用しましょう」ということで、使用済燃料を再処理してウランとプルトニウムを取り出すプルサーマルのままではエネルギー問題の根本的な解決にはなりません。やはり高速増殖炉を目指していくなかで、原型炉()の「もんじゅ」がどうなるか。なかなか難しい部分があると思いますが、やはり最終的には高速増殖炉を含めて、日本は核燃料サイクルを確立して利用し続けていかなければ、高レベル放射性廃棄物を、どう管理していくのか、ずっと人間が見ていくのか、それとも適切な場所があれば処分することが可能なのかということが議論できなくなっていってしまいます。


※原型炉/発電炉としての性能の確認や大型化することの技術的可能性を評価したりするために、実験炉の次に建設・運転される原子炉


事故を教訓に、克服しなければならない課題はたくさんあるのですが、今後も原子力を使い続けていくからその課題を克服できるという流れが私の希望です。


「やめます」と言うのは簡単ですが、使い始めたのですから、きちんと責任をもって管理をし、今後も使い続けていくことでその技術を落とさないようにするのが日本の責任だと思います。

 



── 先生が教鞭をとられる原子力工学科では、福島第一原子力発電所事故後の影響はいかがですか。


浅沼 学科の全体としての人数は激減です。ただ、もともと原子力工学科は物理系の学科ですが、私は再処理を専攻していて化学のほうになりますので、もともと学生にそんなに人気のある分野ではないので、「人気のないまま」かなと(笑)。


ただ、「除染」といったキーワードから自分から「何かできないか」ということで入ってくる学生も出てきています。


就職については、原子力工学科の内定率が非常に良くて、当初工学部でトップだったりした時期もあります。もともと人数が少ないこともありますが、1人、2人がまだ活動中という状況です。今年の4年生たちは非常に優秀です。


これが続いてくれれば「原子力工学科に進んでもいいかな」と思う高校生も多く出て来てくれるのではと期待したいですね。


また、3.11以降に入ってくる学生は、震災後に進路を決めて入ってくるので、目的意識が高く、「ここでこんなことを勉強する」と覚悟している部分もあり、頼もしい印象がありますね。

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