ほうしゃせん古今東西

源氏と八の宮の姫大君の顔の蛍光エックス線分析



  国宝源氏物語絵巻は、全部ではありませんが、かなりの部分が徳川美術館(名古屋市)と五島美術館(東京都)に所蔵されています。

 東京文化財研究所の早川泰弘さんらの研究者は、ポータブルの蛍光エックス線分析装置を美術館に持ち込んで、この絵巻に用いられている顔料の調査を行ないました。絵巻を美術館から持ち出すことはできないからです。

 蛍光エックス線分析は、試料にエックス線を照射して、試料中に含まれる元素から、その元素に特有のエックス線が二次的に放出されるのを測定し、元素の種類と量を知ることができる分析法です。大切な資料を傷つけないで分析できるので、貴重な文化財について用いられる方法です。
 柏木(その三)の絵は、源氏が赤ちゃん(薫)を抱いている場面です。妻・女三宮と友人・頭中将の息子・柏木との間に生まれた不義の子です。源氏物語最大の山場の一つです。
源氏の顔の部分や鼻の部分を蛍光エックス線分析すると、鉛が主成分として検出され、鉛白(塩基性炭酸鉛)が塗られていることがわかりました。また、少量の辰砂(朱のこと、硫化水銀)を鉛白に混合して顔色をつくっていることがわかります。

 また、「橋姫の巻」の絵は、成人した薫が宇治に住む八の宮の邸を訪れ、楽の音に誘われて透垣から美しい姉妹を垣間見る場面の絵です。八の宮は源氏の異母弟にあたる人で、二人の姫を持ち、大君(姉)には琵琶、中君(妹)には筝(琴のこと)を教えた。姉妹の楽しく語らう様子を見た薫は大君に心を奪われ、これが二人の悲恋の発端となったのです。

  この絵の大君の顔と薫の顔のエックス線分析では、鉛よりも水銀の方が多く検出されました。水銀を主成分とする白色顔料が存在したのかどうか、興味深い研究対象となりました。

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