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放射線がどう利用されているか知っていますか?
エネルギー環境講座と見学会(2012年 9月)


2012年10月12日



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平成24年8月20日(月)に東京・新橋で「エネルギー環境講座」が開催されました。参加者は中学・高校の先生、約70名でした。今回のプログラムは、食の安全性、放射線利用の講演会で学んだ後に、見学会として日本航空の整備センターに伺うという内容でした。日本航空はどのような形で放射線を利用しているのでしょうか?
当日の様子をレポートします!


人間は誤解する動物


倉敷芸術科学大学学長の唐木英明先生より、「食物中の放射性物質と食の安全に関するリスクコミュニケーション」と題してご講演を頂きました。
先生から最初にお話しがあったのは、「人間は少ない努力で直感的に結論を求める」ということでした。難しい言葉で「ヒューリスティック」と言うそうです。これは、危険な場面に居合わせた場合など、特に早さが求められるときに役立ちます。立ち止まって正しい方法を考える時間はありませんので、直感的に判断してすぐに逃げなければいけません。
このように人間は生き残るために早く判断ができる方法を獲得してきました。しかし、だからこそ放射線のリスクの話をすると受け入れられないのだそうです。自分が抱いていた放射線のイメージが、データの示す放射線のリスクが違っていても、どうしても自分が持っていた放射線のイメージを優先してしまいます。


「規制値を超えた食品は危険」の誤解


規制値についても誤解があります。私達は「規制値を超えたら危険」と思ってしまいますが、規制値は「万が一値を超えた物を食べ続ける」ということがあっても影響がないように設定されています。人間は「危険だ」という情報に敏感なため、どうしてもそのような誤解をしてしまうのです。
最後に「放射線はたくさん浴びると危険なものなので、怖がることは当たり前のことです。しかし、少しの量を怖がるのは行き過ぎで、そうなると精神的なストレスで悪影響があります」という言葉でご講演を終えられました。


放射線はどのように利用されているか


東京大学大学院工学系研究科の勝村庸介先生より、「放射線工学―放射線の利用―」と題してご講演頂きました。
最初は放射線発見の歴史についてお話し頂きました。キュリー夫人、レントゲン、アンリ・ベクレルなど、どこかで聞いたことがある名前が出てきました。
具体的に、どのようなところで放射線が使われているのでしょうか?例えば、同時多発テロが起こった後のアメリカです。テロのひとつに、「封筒に炭疽菌を入れる」というものがありました。これを受けて、放射線を郵便物に照射する対策をとりました。放射線の殺菌は封を開ける必要がなく、中身を変質させたり残留物もないので、注射器やメスなどの医療器具を滅菌するときにも利用されています。
また、いろいろな製品を作るときにも放射線は使われています。プラスチックやゴムを利用しているものには、強度や耐熱性を高めるために放射線を当てます。身近な製品で言うと、水泳で使うビート板やタイヤがあります。難しい言葉で言うと、放射線による「高分子架橋」という現象を利用しています。


食中毒を防ぐ


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一番身近なところでは、ジャガイモに放射線を照射しています。ジャガイモをしばらく放っておくと芽が出てきますが、この芽には「ソラニン」という毒が含まれています。学校の授業で「ジャガイモの芽は取るように」と先生に教わった方も多いのではないでしょうか?ジャガイモに放射線を当てると、芽が出ません。また、味や安全性にも問題がないため、現在日本でも利用されています。
また、諸外国では牛肉、豚肉の他に香辛料や果物などにも放射線を照射しています。これは、放射線を使って殺菌し、食中毒を防ぐためです。日本では一時、牛の生レバーの食中毒問題があり、生レバーの提供が禁止されました。厚生労働省では、放射線で生レバーを殺菌する研究を開始しています。もし、この研究が成功すれば、また生レバーが食べられるようになるかもしれません。
最後に、勝村先生は「日本ではジャガイモにしか食品照射が許可されておらず、食品照射の利用が遅れている」と指摘して、講演を終えられました。


JALの整備工場を見学


午後に参加者は千葉県成田市へ行き、日本航空の整備工場を見学しました。職員の方から「エンジンの部品が壊れていないか、検査するために放射線を使います」と説明を受け、実際に見てみました。
参加者は近くで見て、ジェット機の大きさに驚いていました。エンジンの吸気口だけで、人間の身長より大きいのです。エンジンは大きいですが、小さな傷が故障、事故に繋がるため、細心の注意を払った検査が必要です。部品の亀裂は、肉眼だけではわかりません。そこで使われるのがX線による非破壊検査です。この検査で、内部の傷や目には見えない微小な傷を探知することができます。
一度起こると、大規模になってしまう航空機の安全性は、このように保たれています。

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