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原子力発電所のシステム設計業務に携わる女性技術者


2014年9月19日


原子力発電所にはさまざまな施設や設備があります。

安全に発電所を運転し、電気を私たちのもとに送り届けるために、多くの人が携わっていますが、どのような人が、日々何をしているのかは、あまり知られていません。

そこで、発電所の運転に関わるさまざまな方にお話をうかがいながら、原子力発電所がどのようなところで、どのような人が働き、いかにして安全を守るために努めているのかをご紹介します。



日立GEニュークリア・エナジー(株)に入社して


日立GEニュークリア・エナジー(株)では、環境保全の取り組みとして、発電用軽水型原子炉施設、高速増殖炉施設、原子燃料サイクル関連施設及びその他関連製品の設計、製造、販売、据付及び保守に関する業務に取り組んでいます。

今回インタビューをお願いした日立事業所 原子力計画部 プラント計画グループの技師である串間有紀子さんは、大学時代に機械工学を専攻し、原子力発電所の予防保全業務に携わりたいと入社しましたが、入社当時建設中の北陸電力(株)志賀原子力発電所2号機での実習業務を通じて、原子力発電所が多くのシステムでなりたっていることを知り、プラント全体に関わることができるシステム設計業務を希望し、今の部署に配属されました。

 


原子力発電所全体を把握するシステム設計者として


入社以来、中国電力(株)島根原子力発電所3号機(ABWR)のシステム設計に携わっている串間さん。

建設の初期段階から、試運転まで、約10年間同じ発電所を担当し続けることができるのはめずらしいそうで、「試運転の際、システム設計の評価のために発電所に常駐していたんですが、自分が作った配管計装線図どおりに、このシステムのポンプが、設計したとおりの流量で、決められた経路で水を流せるということが、実際に確認できたのがうれしかった」と笑顔で語ります。

配管計装線図というのは、発電所の設備をシステム(系統)ごとに分類し、決められた記号により、配管、弁、ポンプ、熱交換器、計器などを図面にしたもので、システムの役割に応じてどのような機器をどのようにつなげていけばいいかを決めてシステム設計するのが、串間さんの業務です。

串間さんの担当する原子炉建屋の中には、発電所を通常運転するときに必要な系統や、事故のときに必要な冷却系など約30系統あり、システム設計者は、1系統A1版サイズもある図面の内容を全て把握していないといけないそうです。

 

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1日のスケジュール

08:00 出社。準備(メールのチェック、一日のスケジュールの確認)
08:50 始業
朝礼にて、チーム全員の一日のスケジュールや打合せの相手先などの情報共有
12:00 お昼。なるべくお弁当を作るようにしています。
13:00 午後の業務(打ち合わせ等)
17:20 終業
最近は、打合せや電話応対で終日つぶれることが多く、残業時間にやっと自分の業務が始まることもあるそうです。

 

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原子力発電所の安全とは


「設備を納めて終わりではなく、きちんと使えないと意味がありませんので、システム設計する段階から、この設備はこういう意図で使うということを、分かりやすく伝えられるように心掛けています」と串間さん。

特に3.11以降は、予防保全設計にも携わっていて、既設の発電所のシビアアクシデント(過酷事故)対策設備の設計という,新しい仕事にも関わっているといいます。

実際、島根原子力発電所2号機(BWR5)のシビアアクシデント対策設備であるフィルタベント設備(排気設備)の設計を行っていて、主な機器が最近納品されたそうです。

「シビアアクシデント対策設備は、ひとつの使い方ではなく、プラントの状態によってこういう使い方をする、これがだめでもこういう使い方ができると、いろいろなオプションがあって、そのようにできなくてはいけない設備です。なので、過酷な事故の状態でも、原子力発電所の安全を維持するためにどのようなシステムにすればよいかを今すごく考えています」とお話されていました。

 

東京電力・福島第一原子力発電所の事故後、外国との付き合いが増えたそうですが、フィルタベント設備の設計に当たっても、ヨーロッパでは以前からフィルタベントの設置を進めていたので、アレバ社(ドイツ)と情報のやり取りをして、実際のシステムや製品の設計につなげたそうです。串間さんも実際にドイツに何度か行って、技術者とディスカッションをしながら設計を進めたそうです。

「ドイツと日本でシステムの考え方が違うのかなと思っていましたが、結果をみながらディスカッションをしてみると、技術的にも、安全に対する考え方も、それほど変わらないということが逆にわかりました」。

「これまで携わってきた発電所の設計は,原設計のリピート設計が多かったです。それでも自分なりに原子力発電所が出来る過程を通じて,発電所の安全について考えてきました。しかし,3.11後は、福島第一原子力発電所の状況を見るにつけ,過酷事故が実際に起こると,本当にあんなことになってしまうんだということを実感したので、心構えがかわりました。あのような事故を二度と起こさないための新しい設備を1から設計することに携わることができているので、これまでとはまた違う気持ちで設計が出来ているなと思います」と語ります。

 


海外プロジェクトへの協力


現在、日立GEニュークリア・エナジー(株)では、英国やリトアニアをはじめとする海外向けの原子力発電所の輸出計画の実現に取り組んでいます。

福島第一原子力発電所の事故を経験した日本のメーカーということで、先方の規制当局からは、その教訓がどのように設計に反映されているのかというコメントがあるそうです。串間さんの所属するプラント計画グループには、海外の担当者もいます。課全体で情報共有を行い、日本ではこういう設備をつけることになっているので、輸出プラントにも反映すべきことはないかということを話しながら日々の業務を進めているそうです。

 


この経験を後輩に伝えたい


「入社から10年間。原子力発電所の設計から、国への許認可申請、現地での試運転を経験し、計画から試運転までプラントの建設過程にタイミング良く関わることができたので、この経験を後輩たちに伝えていきたいと思います。現在、国内では、新設プラントの計画が不透明ですが、原子力発電所の輸出に力を入れている状況のなかで、自分が経験したことを海外マーケットへと活かしていくために、少しでも経験のある人間が、後輩たちに、よいプラントを作っていくために必要なことを伝えていくことを積極的にやっていきたい」と最後に抱負を語っていただきました。

 

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