原子力災害に備えて~原子力緊急事態支援センターを訪ねて~

原子力災害に備えて~原子力緊急事態支援センターを訪ねて~


2013年12月12日収録


preface

電気事業連合会は、東京電力(株)福島第一原子力発電所事故を教訓に、原子力発電所において原子力災害が発生した場合に、多様かつ高度な災害対応を担う「原子力緊急事態支援組織」を2015年度を目標に設立することを予定しています。  本組織設立に先立ち、2013年1月、福井県敦賀市にある日本原子力発電㈱敦賀総合研修センター内に原子力緊急事態支援センターが設置され、必要なロボットの調達やロボット操作訓練などが実施されています。 今回は原子力緊急事態支援センターの取り組みについて、同センター技術グループマネージャーの合田克徳さんにお話を伺いしました。


原子力緊急事態支援センター設立の経緯は


当センターは、3年近く前に福島で起きた福島第一原子力発電所での事故を契機として、日本原子力発電(株)の一組織として設立されました。
電気事業連合会は、電気事業者全体の問題として福島第一原子力発電所の事故を大きくとらえており、その教訓の一つとして、万が一事故が発生した場合でも、多様かつ高度な災害対応が可能な支援体制を構築することを目標としています。
もちろん、事故対応については、各発電所が安全対策や新規制基準への対応などのために改造工事や追加設備の導入などを実施しているところですが、発電所の中の対応だけでは間に合わないことも想定し、外部から多様な支援をする体制を構築する必要がありました。
「原子力緊急事態支援組織」の目標は、外部支援の本格的組織設立ですが、できることから実施していくために、まずは、外部支援ができる体制を2012年度中に整えました。


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原子力緊急事態支援センターのある日本原子力発電(株)・敦賀総合研修センター


センターの具体的な役割は


当センターの役割には緊急時と平常時の2つのフェーズがあります。
緊急時の活動には「資機材運搬」「ロボット操作支援等」、平常時の活動には、緊急時に備えた必要な資機材の手配・維持、機材を操作する作業員の訓練があります。
福島第一原子力発電所の事故では、炉心溶融が起こり、発電所構内に放射性物質が出てしまいました。地震、津波の影響もありましたが、本来、格納容器の中で納めておくべき放射性物質が出てしまったことで、放射線量が高くなり、発電所内での活動が制限されたことが一つの大きな教訓です。
現場の状況を知るためには、人間が直接確認に行くのが一番効率的ですが、対応にあたる作業員の被ばくを避けるために、遠隔で操作できる機材(ロボット)で現地の状況を把握することが求められます。そのためには、現場状況の調査や空間線量率の測定、瓦礫の除去等を行う機材を準備し、有事の際には事故が起きた発電所に届け、機材の使い方を伝える技術支援をする必要があります。
現在、各社から当センターまで来ていただき、センターに置いてある資機材(ロボット)を実際に操作し、災害支援、災害対応の訓練を各発電所の作業員の方に行ってもらっています。
今後は、施設の充実を図りながら、2015年度を目途に多用かつ高度な災害対応ができる体制を構築する準備を進めているところです。
緊急事態支援センターは、本来は活躍する場があってはなりません。しかし、万が一の有事の際に活動できるように、日頃から発電所と連携をはかり、各社の年の防災訓練に積極的に当センターも参加し支援の訓練を行っています。


有事の際の具体的な活動の流れは


例えば、発電所の配管が破断して放射性物質が外に出る恐れがあるという状況で、緊急事態宣言が出された場合、各社からセンターに支援要請の連絡が入ることになっています。
現在、センターには9名の技術スタッフが在籍しています。宿直のようなことはやっていませんが、そのうち3名は30分以内にはセンターに駆けつけて出動することができるように、当番制でオンコール体制を組んでいます。
支援要請を受けた後、陸路(場合によっては空路)で指定場所に資機材を運搬します。北は北海道の泊発電所から南は九州の川内原子力発電所まで17事業所が対象です。


どのような資機材が支援対象となるのですか


現在、当センターでは、遠隔操作可能なiRobot®社製のロボットを3台、2種類保有しています。3台のロボットは、実際に福島第一原子力発電所で導入されているものと同じロボットです。

Packbot®(パックボット)という少し小振りな調査用のロボット2台には現場の状況把握のためのカメラや温度分布が色分けで分かるサーモカメラ、放射線測定器がついています。

瓦礫の撤去などの作業には少し大きめのWarrior®(ウォリアー)というロボット1台を保有しています。

その他の除染資機材には、高圧でシャワーが出る高圧洗浄機や、人の除染もできるように、シャワーテントなどがあります。


現場調査用ロボット

現場調査用ロボット PackBot®

  瓦礫撤去作業用ロボット

瓦礫撤去作業用ロボット Warrior®


センターの具体的な役割は


ロボットの訓練フィールドには、現場を模擬して、階段や障害物、段差、発電所にあるようなバルブや扉、電気盤、さまざまなスイッチを配置したものを準備しています。

当センターでの訓練内容は、「初期訓練」、「定着訓練」、「応用訓練」の3種類があります。

ロボットは発電所にあるような機材ではありません。「初期訓練」は、ロボットを全く触ったことがない人を対象に、まずロボットを普通に動かせるようになってもらう2日間のコースです。

また、せっかく受講した初期訓練の内容も、1年もすれば忘れてしまうことから、技能の定着を目的とし、丸1日再びこちらに来ていただき訓練するのが「定着訓練」です。

さらに、「応用訓練」では、現場操作を想定し、バルブや扉、現場の配電盤などを組み合わせて、例えば部屋の電気を全て暗くして計器の指示を確認しに行く、ロボットを2台連携しながら使い、難しい作業をこなすなど、福島第一原子力発電所での実際の経験を反映し、より実践的な事故対応を想定した訓練を行っています。


訓練フィールド

訓練フィールド


操作は段階ごとに難しくなりますが、3つのメニューで事故対応に即した、現場でも使えるような技術をこちらで訓練していただくことを考えています。

現在訓練メニューは3つですが、各社からニーズが出てくれば、現場状況に合わせ改善を図っていく予定です。

また、各社の防災訓練に出かけたときに見た現場状況を踏まえながら、当センターも自ら設備の改善や訓練状況を見直すなど、訓練の内容もどんどん発展させていきたいと思っています。

訓練の実績ですが、2013年11月までで各社17事業所からおよそ250名の方を受け入れました。

ただ、保有しているロボットの台数が少ないため、訓練を効果的にするためにも、1回あたり4~6名の人数で来ていただくようにお願いしています。



今後さらにロボットを調達する予定はありますか


もちろんあります。センターで使用しているロボットは、訓練機材でありながら、有事に備える待機機材でもあります。現状は、センターでの操作訓練と各社の防災訓練を3台のロボットで回しているので、ヘビーな使用をしていると思っています。ほぼ毎週のように訓練が入っているため、できればもう少しロボットの数を増やしていきたいと考えています。故障時の部品の予備品的な意味合いの他、2台同時に使った訓練も充実させて行いたいです。

2台のロボットを同時に動かす理由として、ロボットのカメラの視野が非常に狭いことがあります。福島第一原子力発電所の事故処理でも、1台であらゆることをやるのは非常に難しいため、2台一緒に現場に投入しています。1台が周辺状況を含め現場を把握しながら、もう1台が個々の作業をするというような運用をしないと、現場での作業はなかなかスムーズにいかないことがわかってきました。各社の防災訓練にも現状では1台しか持ち出しできていませんが、現地でも2台連携で訓練をやったほうが効果的でしょう。余裕をもって貸し出せる台数を準備したいと思っているところです。


iRobot®社製以外のメーカーのロボットで期待できそうなものはあるのですか


日本製のロボットも開発が進んでいると聞いていますので、良いものがあれば当センターでも導入を考えたいと思っているところです。

実際、福島第一原子力発電所にもiRobot®社のロボット以外にも日立製作所や東芝、トピー工業という会社のロボットが導入されています。そのような実績があり、使い勝手がいいようであれば、是非センターでも導入を検討したいと思っています。現在、様々な情報収集をしているところですが、良いものがあれば増やす、もしくは種類の多様性も図っていければと思っています。


ロボット開発のためにセンターが協力することもあるのですか


ロボットの開発は、各メーカーや研究機関などで進められています。

そのため、当センターで各メーカーや研究機関のロボット開発に直接係ることはありませんが、ロボットについての情報収集も必要なことから、関係機関と情報交換を行う等の活動は実施しています。


福島第一の作業に実際にロボットが入りわかった知見などは


実際にロボットを使用しているところは、福島第一原子力発電所以外にはなかなかありません。そこで、福島第一原子力発電所での教訓などは極力情報共有する努力をしています。

ロボット1台の作業には限界があるということの他に、実は、中継の技術にも課題があることがわかりました。

無線でロボットを動かす場合、無線が届く範囲は100メートルくらいです。日本国内では、使える電波の規制があり、制限内でやろうとすると短くなってしまうのです。原子力発電所には、放射線を遮蔽するために様々な壁があります。壁や扉があるために電波が届かないということがあるので、中継の技術も検討しなければなりません。

作業現場までの距離がある場合、1台を光ファイバーや有線ケーブルで結び電波の基地局として使うことで、もう1台は作業現場を無線操作で自由に動かすことができます。

その他にも、実際の現場は障害物があり、行動できる範囲が限られることが知見として聞いているので、中継にも様々な機材を準備しなくてはならないと考えています。


2015年目途の本格的な組織は福井県美浜町に設立するという情報もありますが


隣町の美浜町から招致の声が上がっており、現在、候補地として検討中と聞いています。

現在は、日本原子力発電の社員研修向けの一室を間借りしている状態ですが、今後正式な施設ができれば、専用の訓練施設や簡単なメンテナンス施設の充実を図ることもできるのではないでしょうか。具体的なところは、まだこれからの検討と聞いています。

当センターとしては、ロボットに関しての知見や、機材を原子力緊急事態支援組織に引き継いでいけるよう準備を進めているところです。

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