ほうしゃせん古今東西

内田光子さんのピアノ


2013年8月26日


世界を舞台に活躍する高名なピアニスト・内田光子さんはロンドンに住んでいて、各地で演奏会を開くとき、会場に備えられているピアノを彼女自身に合うように信頼する調律師に調整してもらって使われるそうです。


ただしレコーディングを行なう場合は、彼女自身のピアノを持って行って使われます。遠い国にも持って行くのだそうですが、その理由は、指先が鍵に触れたときの感触が違うのが主要なことで、また象牙なので指の汗を吸い取ってくれるということです。 ところが問題が起きました。ワシントン条約ができたことです。この条約は絶滅の恐れがある動物を保護するためで、象牙も適用されて、国境を越えられないのです。内田さんはやむなく、鍵盤の部分だけ別に作らせたものを持って行くのだといいます。プラスチックの鍵盤なので感触が落ちるし、汗を吸い取ってくれないのです。


そのため、マンモスの牙で鍵盤を作って持って行けば、はるかに良いのではないかという考えが出てきました。マンモスの牙はワシントン条約で禁止されていないからです。象牙とマンモスの牙は、物理的性質、化学的性質が全く同じなので、象牙と同じ感触になり、汗も吸ってくれるはずです。


象牙とマンモスの牙は、このように類似しているので、困っているのが税関検査官の方々です。関税中央分析所の佐藤宗衛さんは、象牙とマンモスの牙を識別する研究を重ね、微量成分であるストロンチウムとカルシウムの存在比がわずかに違うことを発見しました。 税関で、蛍光エックス線分析器により識別するのです。この分析法は、試料にエックス線を照射すると、含まれている元素特有のエックス線を二次的に放出するので、これの波長やエネルギーを測定して、含まれる元素の種類や量を知る方法です。ストロンチウムとカルシウムの比を知る簡便な方法なのです。


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