住民帰還に向けた除染の現状と課題

住民帰還に向けた除染の現状と課題


2013年8月26日


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平成25年8月、福島県川俣町の山木屋地区の避難指示区域再編が行われ、福島第一原子力発電所事故で福島県内11市町村に設定された避難指示区域再編は全て完了しました。
区域再編は、住民の早期帰還への目安や、将来設計の手がかりとして設定されましたが、住民の早期帰還のためには除染の加速化が重要です。さらに、除染の加速化の鍵を握るのが除染で発生した土壌などを保管する中間貯蔵施設です。住民の帰還があってこその「復興」とも言われますが、事故から2年半が経過した今、除染はどこまで進んでいるのでしょうか。除染の進捗状況と今後の課題についてご紹介します。


除染の対象は


除染の対象となる地域には、国が中心となって除染を進める地域(除染特別地域)と市町村が中心となって除染を進める地域(汚染状況重点調査地域)があります。


国直轄「除染特別地域」では


田村市では除染完了、しかし再除染を求める声も


国直轄で除染を進める「除染特別地域」は、放射線量に応じて、

  • 早期帰還を目指す避難指示解除準備区域(年間追加被ばく線量20ミリシーベルト未満)
  • 数年間は帰還できない居住制限区域(年間追加被ばく線量20~50ミリシーベルト)
  • 当面帰還が難しいとされる帰還困難区域(年間追加被ばく線量50ミリシーベルト超)
に分けられました。このうち、年間20ミリシーベルト未満の地域については、除染の長期目標として年間1ミリシーベルト以下という数値が設定されました。


除染特別地域に指定されている福島県内11市町村のうち、田村市では今年6月に計画に基づく除染が完了し、現在6町村で本格的な除染が開始されています。


田村市では、除染により高線量の住宅で平均8割、低線量の住宅で平均2割放射線量が低減しました。この8月には、3か月の長期宿泊も認められ、住民の早期帰還が期待されますが、除染の長期目標である年間1ミリシーベルト以下となるよう、再除染を求める声もあり、避難指示解除の時期の決定までには、市や住民の十分な協議が必要です。


環境省は、平成24年からの2年間に除染特別地域内で実施された除染の進捗状況を全ての市町村で点検・評価し、7月末には除染特別地域内11市町村のうち、今年度中に終了する予定だった7市町村(※1)の除染作業を延長する方針を公表しました。


帰還困難区域は除染の明確な方針が示されていませんが、9月から、浪江町と双葉町において帰還困難区域で初のモデル除染の実施が予定されています。除染の効果や手法、作業員の安全管理方法など、高線量地域での今後の除染のあり方や新技術の開発などについて検討されます。


除染特別地域の除染の進捗状況


進捗状況 市町村 先行除染
(拠点の除染)
除染計画の
策定
本格除染
仮置場
除染作業
本格除染
作業中・見込み
田村市 (H24/4/13) (確保済み) (H24/7/25〜
H25/6/28
事業終了)
楢葉町 (H24/4/13) (確保済み) (H24/9/6〜
実施中)
川内村 (H24/4/13) (確保済み) (H24/9/4〜
実施中)
飯舘村 (H24/5/24) (一部確保済み) (H24/9/25〜
実施中)
川俣町 (H24/8/10) (一部確保済み) (H25/4/25〜
実施中)
葛尾村 (H24/9/28) (一部確保済み) (H25/4/25〜
実施中)
大熊町 (H24/12/28) (確保済み) (H25/6/24〜
実施中)
南相馬市 (H24/4/18) (一部確保済み) (作業準備中)
富岡町 (H25/6/26) (一部確保済み) (入札手続中)
浪江町 (H24/11/21) 調整中  
計画未策定 双葉町 調整中    

※除染作業の実施には、除染実施計画の策定、仮置場の確保、地権者の同意取得が前提

環境省 水・大気環境局 「除染の現状について(平成25年6月)」より作成


市町村が除染を進める「汚染状況重点調査地域」では


公共施設と農地は比較的順調、住宅は3割


汚染状況重点調査地域には、福島県内の40市町村と岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の58市町村(平成25年6月末現在)が指定されています。


これらは、年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以上となる地域のある市町村で、指定を受けた市町村では、測定の結果をもとに除染計画を定める地域を判断し、市町村が中心となって除染を進めています。


福島県内40市町村の除染の実績は、公共施設で6割、農地で8割と比較的順調に進んでいます。


しかし、住宅の除染については、除染前のモニタリングや除染に関する同意を得ることに時間がかかるため、実績数は約1割となっています。


福島県外の58市町村では、平成23年度からの2~3か年計画で、学校・保育園、公園など子供の生活環境に関連する場所の除染を優先的に実施し、学校や保育園はほぼ終了、公園やスポーツ施設は約8割の実績と順調に進んでいます。住宅の他、農地や牧草地などでも着々と除染が進められていますが、生活圏近隣の森林については、依然として実績は数%のみの状態で、今後の除染の加速化が期待されます。


汚染状況重点調査地域における除染の進捗状況


福島県内
(平成25年4月末現在)
発注割合 実績割合
公共施設等(5429施設) 約8割 約6割
住宅(18937戸) 約5割 約1割
道路(4501km) 約4割 約2割
農地・牧草地(23548ha) 約9割 約8割
森林(生活圏) 約2割 約1割

注:「計画」は25年度末までのもので、全体数は各市町村により、調整中や未定となっており、今後増加する見込み。(  )内は計画数

福島県外
(平成25年6月末現在)
発注割合 実績割合
学校・保育園等(約1600施設) ほぼ発注済み ほぼ終了
公園・スポーツ施設(約3400施設) 約8割 約8割
住宅(約140000戸) 約6割 約3割
公共施設等(約4200施設) 約3割 約3割
道路(約4000km) 約3割 約3割
農地・牧草地(約15km2 約8割 約6割
森林(生活圏)(約2km2 一部 一部

注:予定数は現時点で具体的に予定のある数字であり、今後増加する可能性もある。(  )内は予定数

環境省 水・大気環境局 「除染の現状について(平成25年6月)」より作成


除染の鍵を握る中間貯蔵施設と減容化技術


除染で発生した廃棄物は、「仮置き場」や除染現場で3年ほど安全に保管され、その後、中間貯蔵施設に搬送されます。


福島県では、除染による土壌や廃棄物が大量に発生し、その中には汚染レベルが高いものもあります。このため、福島県内の土壌、廃棄物のみを対象とした中間貯蔵施設を県内に作り、対象物を保管・管理し、中間貯蔵を開始して30年以内に福島県外の最終処分施設へ搬出することとしています。


しかし、施設整備の見通しがなかなか立たず、中間貯蔵施設設置が進まないと仮置き場の確保も難しいという声もあります。福島県の報告によると、除染で発生した除去土壌の9割が仮置き場以外の学校や公園などの除染現場で保管されたままという現状です。(平成24年12月末時点)


現在、中間貯蔵施設の候補には、福島県双葉郡内の双葉、大熊、楢葉の三町があげられており、この内の9か所の調査候補地において、水源や地質、地下水位などを把握するための調査が行われます。この5月には大熊町、7月には楢葉町でボーリング調査が開始されました。


今後、期待されるのが土砂や廃棄物などの体積を減らす「減容化技術」です。中間貯蔵施設へ移動する前に廃棄物の体積を減らすことが可能になれば、より多くの廃棄物の保管・搬入が可能となり、除染の加速化につながります。国は、減容化技術の他、除染作業の効率化、汚染廃棄物処理技術など今後の除染作業に活用し得る有望な技術を公募し、実証試験を行う技術を採択することとしています。


除染の長期目標は「年間1ミリシーベルト以下」ですが、市町村などからはこの数値の達成に向けて苦慮しているという声も出ています。1ミリシーベルトという「数値」の達成にとらわれると、住民帰還が遅れるばかりか、長期避難に伴う精神的ストレスによって健康を損なうなど、別の側面のリスクが高まります。数値にとらわれすぎることなく、早期の住民帰還に向けて何が最適なのか、リスクのバランスを慎重に考える時が来ているのかもしれません。


※1(対象となる7市町村は南相馬市、飯舘村、川俣町、葛尾町、浪江町、富岡町、双葉町)
※除染特別地域内除染状況データは平成25年6月末現在
※汚染状況重点調査地域除染データのうち、福島県内市町村のデータは平成25年4月末現在、福島県以外の58市町村データは平成25年6月末現在

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