ほうしゃせん古今東西

ゴッホの絵に隠されていた黒猫


2013年8月30日


ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの絵は、日本にもいくつかあります。東京のブリヂストン美術館(現在長期休館)には「モンマルトルの風車」という絵があり、エックス線写真で調べたところ、この絵の下に女性の顔が描かれていたことが判明しました。


ひろしま美術館には、ゴッホの「ドービニーの庭」という油彩画が所蔵されています。ところが興味深いことにスイスのバーゼル美術館にも「ドービニーの庭」というゴッホの作品が所蔵されています。両者は同じ題名であり、絵もほとんど同じであるといいます。ただし、よく比べてみると細部は少し違っていて、最も大きな違いは、バーゼルの絵の左下方の部分には黒猫が歩いているのに、ひろしま美術館の作品には、この黒猫がいないそうです。


しかし、黒猫がいるはずの部分が茶褐色に変色しているように見えるので、エックス線、紫外線、赤外線で写真を撮ってみましたが、黒猫は確認されませんでした。しかし、その部分は絵具を重ね塗りしてあるように感じられました。


吉備国際大学の文化財研究センター所長の下山進先生は、蛍光エックス線分析および蛍光エックス線顕微鏡による元素マッピング解析を行なって、黒猫が隠れていないかを調査しました。蛍光エックス線分析は、試料にエックス線をあてると、含まれる元素特有のエネルギーを持つエックス線(蛍光エックス線と呼ぶ)を放出するので、それを測定して含まれる元素の種類を知る方法です。


こうして、問題の部分には黒猫の姿がクローム(Cr)を主成分とするクロムイエローと、鉄を成分とするプルシアンブルーを混合して描かれているとわかりました。しかし、後に鉛を主成分とするシルバーホワイトと、周囲の色に似た色の絵具を混ぜて、猫の上に塗り重ねて見えなくしたと考えられました。やっぱり、猫は隠されていたのです。


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