rep

みんなで考えてみませんか
放射線についてのワークショップ(2012年 1月)


2012年2月19日



十文字学園女子大学 大学開放・地域連携推進センター(埼玉県新座市)で、平成24年1月28日(土)に「みんなで考えてみませんか 放射線についてのワークショップ」が開催されました。
新座市の学校教員や、教職課程を選択している十文字学園女子大学の学生など70名が参加し、様々な意見が交わされました。
その様子を、環境教育支援ネットワーク きづきのメンバーがレポートします!


いまを知る


基調講演
「日本の原子力発電の今~ヨーロッパ視察を終えて~」
内閣府原子力委員会委員の秋庭悦子さん


昨年12月、東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束が宣言されました。これは、原子炉を安定して冷やし、放射性物質の放出を大幅に抑えられるようになったということでした。今後は、使い終わった燃料や原子炉の中の溶けた燃料などを取り出して、福島第一原子力発電所の廃止に向けた作業が始まることや、福島県内などの除染が進められることについてお話がありました。
また、昨年秋に視察したスイスとフランスが事故を踏まえて原子力を今後どう利用していくことになったのか、また、高レベル放射性廃棄物をどうやって処分していくのか、調べた結果が紹介されました。
スイスは永世中立国です。エネルギーも外国に依存しないために、エネルギーの約4割を原子力発電が支えています。事故の影響によって脱原子力へと政策を変えることになりましたが、省エネや新エネ導入を進めるだけでは不足分の確保は難しいようです。ヨーロッパの国々から電力を輸入したり、天然ガスによる火力発電を増やしたりしないといけなくなる、と予測されています。
フランスでは、電気の約8割を原子力発電が支えています。フランスで作られた電気は、ドイツやイタリアをはじめ、ヨーロッパの国々に輸出されています。フランスでは事故後、今後も原子力発電を利用していくことを表明し、発電所の安全対策の確認がすぐに進められたそうです。
高レベル放射性廃棄物とは、原子力発電所で使い終わった燃料のうち、リサイクルできない部分です。スイス・フランスでは日本と同様に地層に処分する方針で、スイスは3か所ある候補地を絞っている段階で、フランスは候補地がすでに決まっています。フランスでは今後、国民の意見を聴くために独立した機関によって公開討論会が開かれるそうです。


rep05_02


講演
「埼玉県内と新座市周辺の放射能の現状について」
十文字学園女子大学教授の田中茂さん


事故発生後、テレビでは事故に対応する人たちの白い防護服やマスク姿をよく見かけるようになりました。25年前の旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故では、このような放射性物質から身をまもるための対策が何もされず、作業にあたった運転員と消防隊員の28名が亡くなられたそうです。
今回の事故対応ではこのようなことがないように、防護服やマスクを正しく装備することがとても大切とのことです。いまのところ、作業にあたった方々が被ばくした量は、健康に影響を与えるレベルではないようです。
また、事故で広がった放射性物質に対する不安が高まっていることから、十文字学園や近隣の幼稚園などで放射線量を測定した結果について紹介がされました。その結果は、新座市の除染をおこなう基準の放射線量と比較して、十分低い値だったそうです。


rep05_01

放射線を観察


放射線可視実験
「霧箱実験で見えない放射線を見てみよう」
日本科学技術振興財団の掛布智久さん


放射線は目に見えない、危険、なんだかよくわからないもの・・・。そう思っている人もたくさんいると思いますが、日本科学技術振興財団の掛布さんの指導のもと、みんなで放射線を観察する装置をつくりました。
まずはじめに、放射線や放射能、放射性物質について説明がありました。「放射線」をボールに例えると、ピッチャーのボールを投げる能力が「放射能」、ボールを投げるピッチャーは「放射性物質」に例えられました。ボールが体にあたることを「被ばく」、ピッチャーが体などにくっつくと「汚染」というそうです。
また、放射線が体に与える影響を表す「シーベルト」は、キャッチャーがボールを受けた時の衝撃に例えられ、ピッチャーが1秒間に投げるボールの数が「ベクレル」にあたり、放射能の強さを表すということでした。
つぎに、私たちはα線という放射線を観察するため「霧箱」という簡単な装置を一人ひとつ組み立てました。すると、α線の飛んだあとにできる飛行機雲のような霧を観察することができました。
α線は、自然に空気中にあるラドンなどから出ている放射線で、私たちは呼吸することでラドンを吸い込むので、体の中からも被ばくをしているそうです。


rep05_03


rep05_04

ワークショップ「自分の事として、みんなで考えよう」


色々なお話を伺ったり、放射線の観察などを体験し、原子力発電や放射線について少し身近に考えられるようになったところで、高レベル放射性廃棄物の地層処分問題について、参加者同士で意見を交わしました。 最後に各グループで交わされた意見をまとめて、次のようにグループごとで発表しました。


rep05_05

1班

☆ 高レベル放射性廃棄物地層処分

福島第一原子力発電所の地域に埋めるのが合理的。現在保管している所(発電所)の地層で処分を行う。情報を知る機会が少ない。


☆ 原子力発電所をつくらない

原子力自体を減らす。海上風力など増やす。


☆ 課題

解決策はなかなかみつからない。
発展途上国などが、立候補することがあるかも!

2班

高レベル放射性廃棄物についての知識がなかったため、少し説明を必要とした。


1「情報が足りない」という意見が多く出た。

またこれについての教育も必要である。


2「処分は2択」

  1. 放射線が出ている所がわかっているから、その場に埋める。移動すると危険。
  2. 日本全体の問題なら平等にするべき。国の指示で皆従うしかない。


3「研究が必要」

より安全についての研究や核リサイクルの研究開発をすすめ、核燃料廃棄物を少なくする。研究費は削らないで。

3班

高レベル放射性廃棄物の地層処分の話になる前に質問・不安・反対意見等でのワークショップになってしまった。
最後に提案として、地震国日本にとっては、地層処分は決して安全とは言えない。他の方法を考えるべきではないか。
処分の方法で現在より安全な方法の研究をすべきであるというような意見が出た。
4班

原子力発電の利用はこれまでどのように考えられてきたのか、反省すべき点を整理したうえで、高レベル放射性廃棄物の処分については「地層処分の知識が不足」「・処分は法律で決まっているので、受け入れてくれる所を探すしかない」「『すでにある以上の廃棄物をつくらない』つまり脱原発を表明してから、最終処分について国民の理解を求めるべき」「原子力発電の先進国の方法で活かせることはないか?」「消費地でゴミは受け入れるべき」「国民への説明、理解してもらう」という意見が出ました。
5班

私たちの班では、「高レベル放射性廃棄物についてどう考えるか」というテーマでは、どんな方法を取っても問題があり、話し合うことが難しかったので、話し合いの柱を「1 危機意識」、「2 正しい知識」、「3 電力供給」の三点で協議を行いました。
放射線については、長く付き合っていかなければならない問題である。一方的に情報を受けているだけではなく、正しい情報を得る努力をしたり、考えたり、一人一人の意識を高めていくことが大切。このような学習会や情報交換の場は必要である。
6班

放射性物質に対する安全性や今後の原子力発電との付き合い方、未来のこどもたちにはどう伝えたらいいのかなど漠然として大きな不安がある。そして地層処分にはまだ不安が残るが、今の日本のように政府主導ではなく、ドイツやフランスなどのように国民の民意を反映させる。そのためには、誰でもわかる・伝える・共有する、の3点を重要視し、今日のワークショップのような公開討論、事実と真実を知る講習会が今後は必要になる。



参加者からの感想


秋庭さんの講演を聞いて


  • スイス、フランス、日本との原子力発電所の捉え方の違いもあり興味深かったです。
  • 福島第一原子力発電所を廃炉にするまでとても長く大変な工程が必要なのだということが理解できました。
  • 「スイス政府の脱原子力政策」、「フランスでの公開討論会」など、ヨーロッパの中でも様々な考え方があることが分かり、大変興味深い内容でした。

田中さんの講演を聞いて


  • 十文字学園女子大学附属幼稚園のグランドにおける大気中の放射線量率の測定結果や、新座市の除染基準についての情報提供は、参加者の皆さんにとって大変興味深いものであったと思います。防護服、マスクの実物の紹介などがあり、放射能による影響を軽減するために、防護するということについても考えていく必要があると感じました。

掛布さんの講演を聞いて


  • 放射線を間接的に観る今回の実験は面白かったです。装置も簡単で子供たちばかりでなく大人も楽しい実験でした。2種類の放射性物質の放射線を可視しました。
  • 霧箱を使った放射線の実験は単純ながら、大変興味ある内容でした。「シーベルト」と「ベクレル」を野球のピッチャー、キャッチャーのボールの投球に例えた説明はわかりやすかったです。
  • 今も放射線は目の前を通過しているのに人間にはそれが見えることはなく、そのため身近に考えたことがなかったのだと今回の実験をしてみて思いました。
  • 放射線について、みんなが正しい知識を持つことが大切であると感じました。

このページをシェアする

ページTOPへ