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    第6章 放射線


  • 【6-1-1】放射能と放射線


    放射能は放射線を出す能力のことをいう。放射線を出す能力をもった物質のことを「放射性物質」という。懐中電灯にたとえると懐中電灯=放射性物質、懐中電灯から出る光=放射線、懐中電灯の光の強さ=放射能の強さとなる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-1-2】放射線に関する単位


    放射能の強さ(ベクレル)や、放射線を受けた人体への影響(シーベルト)など、調べる目的に合わせて使われる単位にはいくつかの種類がある。また、その放射線・放射能を測る測定器も目的にあわせて種類がある。(2016年3月14日更新)


  • 【6-1-3】電磁波の仲間


    電磁波には、テレビやラジオの放送に使われる電波や紫外線、赤外線等も含まれる。レントゲン撮影に使われるエックス線や放射線も電磁波の仲間である。なお、電波は、エックス線などと比較すると周波数がきわめて低くエネルギーも小さいため、非電離放射線(物質の原子を電離させることができない電磁波)の仲間になる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-1-4】放射線の性質


    放射線には、電離作用、蛍光作用、透過作用があり、各特性は医療や工業、農業等のさまざまな分野で応用されている。電離作用は、放射線が物質を通過する時、もっているエネルギーを原子や分子に与え、電子をはじき出す働きである。蛍光作用は、紫外線や放射線などが物質にあたった時、その物質から光を出させる働きのことである。透過作用は、放射線が物質を通り抜ける作用のことである。(2016年3月14日更新)


  • 【6-1-5】放射線の種類


    原子核には、不安定で自然に放射線を放出して別の原子核に変わっていくものがある。原子核が壊れる現象を壊変(崩壊)という。放射線は、原子核が壊れる時に放出される高速の粒子と高いエネルギーをもった電磁波のことである。原子核の壊変には、アルファ壊変(崩壊)、ベータ壊変(崩壊)がある。アルファ線やベータ線を放出した原子核の多くは、不安定な状態(励起状態)になるが、それらが安定な状態になる時にガンマ線が放出される。(2016年3月14日更新)


  • 【6-1-6】放射線の種類と透過力


    放射線は物体を通り抜ける性質(透過)がある。しかし、物体の材質やその厚さによって放射線は通り抜けることができない。放射線の種類はアルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線、エックス(X)線、中性子線に分けられ、各々物質を透過する能力が異なるため放射線の種類にあわせた物質を用いることにより放射線をさえぎること(遮へい)ができる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-1-7】放射能の減り方


    放射能(放射線を出す能力)は、時間の経過とともに減っていくという大きな特徴がある。放射能の量が半分に減るまでの時間を半減期といい、放射性物質によって異なる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-2-1】日常生活と放射線


    私たちは日常生活を送る上で自然界から受ける自然放射線(世界の年間平均2.4ミリシーベルト)以外に、身近な例としてレントゲン写真やCTスキャンなど人工的に作り出した放射線を受ける場合がある。(2016年3月14日更新)


  • 【6-2-2】自然放射線から受ける線量


    自然放射線は、宇宙から地球に降り注いだり、地球上の岩石・食物などから出ており、人類は誕生以来、常に自然放射線を受けている。自然放射線には、宇宙、大地等の体外(外部)から受ける放射線と食物摂取や空気中のラドン等の吸入によって体内(内部)から受ける放射線がある。なお、欧米諸国に比べ、日本人は魚介類の摂取量が多く、ポロニウム210による実効線量が大きい。(2016年3月14日更新)


  • 【6-2-3】自然放射線レベルの違い


    自然放射線のレベルは場所により異なる。例えば、海上では、海水自体に放射性物質が少なく海底からの放射線が海水によって遮られるため、放射線レベルは低い。高度11,000mの上空では、宇宙線が空気に遮られないことから、高度が上がるほど宇宙線量が高くなる。地下街では宇宙線は遮られるが、地下街の周辺環境からの放射線により高くなる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-2-4】体内、食物中の自然放射性物質


    大地や海水中に含まれる放射性物質は、野菜や魚などに吸収され、食べ物を通して体内に取り込まれる。人間はだれでも体内に数種類の放射性物質をもっているが、代表的なものはカリウム40やポロニウム210である。このように食物摂取により体内に取り込まれた放射性物質からの放射線の量は、1年間に約0.99ミリシーベルト程度になる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-2-5】放射線のいろいろな利用


    放射線はガン等の病気の治療(放射線治療)や、病気を見つけるためのレントゲン写真・CTスキャンなどの医療分野で利用されている。また、自動車のゴムタイヤを硬くする、プラスチックの容器を熱に耐えられるようにする、テニスラケットのガットをボールがよく飛ぶように弾力を強くするなどの工業分野、その他農業分野でも広く利用されている。放射線の利用には被ばくによるリスクを考え、必ずメリットが上回るような配慮が必要となる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-1】放射線防護の基本


    放射線防護の3原則は、遮へい・距離・時間という3つである。「遮へい」の原則は、放射線源と作業者の間に遮へい物を設置することにより被ばく線量を低減すること、「距離」の原則は、放射線源と作業者との距離を離すことにより、作業時における空間線量率を低減することである。「時間」の原則は、作業者が放射線を受ける時間を短縮することである。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-2】放射線の人体への影響


    放射線の人体への影響は、放射線を受けた(被ばくした)本人に影響が出る「身体的影響」と、放射線を受けた人の子供や孫に影響が現れる「遺伝性影響」とに分けられる。前者には、放射線を受けて数週間以内に症状が出る「急性障害」と、数か月から数年後になって症状が出てくる「晩発障害」に分けられる。一方、放射線の人体への影響は、しきい値のある「確定的影響(組織反応)」としきい値はないと仮定する「確率的影響」に分類することもできる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-3】放射線を一度に受けたときの症状


    放射線を受けると、細胞内の染色体内にあるDNAが損傷を受けるが、人体は損傷を修復する機能を備えているので、放射線量が少ない場合は、ほとんど影響がない。しかし、一度に受けた放射線量が多い場合は修復が間に合わず、変化する細胞も多く障害が現れるため、最悪の場合には死亡してしまう。なお、100ミリシーベルト以下の放射線を一度に全身に受けても、確定的影響(組織反応)は見られない。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-4】放射線を受けたときの人体への影響


    人体が一度に大量の放射線を受けた場合には、受けた線量の大きさによりさまざまな影響が出る。どのくらいの放射線量を受けると、どのような症状が現れるのかは分かってきている。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-5】放射線防護の考え方


    放射線の人体への影響のあり方には「確定的影響」と「確率的影響」がある。
    確定的影響は、「一定量の放射線を受けると影響が現れる」現象をいい、受けた放射線の量が多くなるほど、その影響度(障害)も大きくなる。確定的影響は、数多くの細胞が放射線によって傷ついたときに生じ、毛が抜けたり、白内障 になったりという障害が発生するが、放射線を受ける量を一定量(しきい値)以下に抑えることで防ぐことができる。
    一方、確率的影響は、一定量の放射線を受けたとしても必ずしも影響が現れるわけではなく「放射線を受ける量が多くなるほど影響が現れる確率が高まる」現象をいう。確率的影響は、しきい値がないと仮定する影響のことでガンや 白血病があるが、放射線の量が多くなったからといって、症状が重くなるわけではない。
    放射線防護の原則は、しきい値のある確定的影響はそれ以下で、しきい値はないと仮定する確率的影響は容認できるレベル以下で線量を管理することとしている。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-6】被ばくと汚染の違い


    私たちが放射線を受ける経路には、外部被ばくと内部被ばくがある。外部被ばくとは、人体の外部にある放射性物質から放射線を受ける被ばく。内部被ばくとは、放射性物質が吸入、経口、創傷を介して体内に取り込まれることにより受ける被ばく。同じ1ミリシーベルトであれば両者の人体に与える影響は同様になる。汚染とは、放射性物質が皮膚や衣類に付着した状態を指す。付着した放射性物質から出る放射線は、人体の表面または体内で拡散することはないが、放射性物質で汚染された場合は、放射性物質が除去されるまで放射線を受け続ける。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-7】グレイとシーベルトの関係


    グレイ(Gy)は、放射線から物や人が単位質量あたりに受けるエネルギー量で定義される「物理量」である。シーベルト(Sv)は、放射線が人間に当たったとき、どのような影響を及ぼすのかを評価するための単位で、放射線防護の指標である。シーベルトの値は、グレイの値に人体が受けた放射線の種類(放射線加重係数)や、放射線を受けた人体の部位(臓器・組織の別)の放射線に対する感受性(組織加重係数)の重み付けをして算出する。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-8】内部被ばく線量(預託線量)への換算方法


    体内に取り込まれた放射性物質から内部被ばく量を算出する場合、実効線量係数を用いる。実効線量係数とは、体内に取り込んだ放射性物質の量と組織や臓器が受ける線量の大きさとの関係をあらかじめ求めておくことにより、放射性物質の量に対応した被ばく線量を計算するための係数である。(2017年9月5日更新)


  • 【6-3-9】内部被ばくの評価(預託線量の概念図)


    放射性物質を体内に取り込んだ後に、内部被ばくを与え続ける放射線の実効線量を、一定期間にわたって積算した値を預託実効線量という。一定期間としては、成人については50年間、子どもについては取り込み時から70歳までの期間が採用されている。なお、体内に取り込まれた放射性物質は、時間が経つにつれて放射能が減衰するとともに、代謝機能により体内から徐々に排せつされる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-10】食品基準値の国際比較


    日本の食品基準値(放射性セシウム)は、食品の安全と安心を確保する観点から、年間線量1ミリシーベルト以内になるよう設定されている。
    なお、日本の食品基準値はヨーロッパやアメリカの基準値よりも厳しい値に設定されている。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-11】放射線防護における線量の基準の考え方


    ICRP(国際放射線防護委員会)は、緊急時の被ばく状況において、放射性物質により汚染された食品の摂取制限等に伴う健康リスクと被ばくによるリスクを考慮して、放射線防護の基準値を年間20~100ミリシーベルトとしている。福島第一原子力発電所事故では、緊急時の状況における基準で最も低い値である年間20ミリシ-ベルトを採用している。事故収束後の復旧期では、汚染による被ばく基準で最低の年間1ミリシーベルト以下まで戻すことを目標に、様々な方策で「合理的に達成可能なできる限り低い」被ばく線量を目指している。(2016年3月14日更新)


  • 【6-3-12】
    放射線と生活習慣によってがんになる相対リスク


    広島県と長崎県で続けられている被ばく者の追跡調査と、生活習慣によってがんになるリスクについて、研究の結果、一般公衆の年線量限度の100倍にあたる100ミリシーベルトを被ばくした場合のがん発症率は、通常の1.08倍に増加し、野菜不足とほぼ同様であった。(2016年3月14日更新)


  • 【6-4-1】放射線業務従事者が受けている放射線量


    放射線業務従事者が受けている放射線量は、法令限度値(5年間で100ミリシーベルト。ただし1年間で50ミリシーベルトを超えない)を大きく下回っており、近年は1ミリシーベルト程度で推移している。
    2010年度および2011年度は、福島第一原子力発電所の事故対応により増加している。(2017年3月22日更新)


  • 【6-4-2】原子力発電所の区域区分


    原子力施設では施設エリアを目的別に大きく3つに区域区分している。
    「管理区域」は原子力施設において放射線、放射性物質による放射線障害を防止するため人の出入りを制限している区域、「保全区域」は放射線の管理は必要としないが施設の保全を必要とする場所で管理区域以外の区域、「周辺監 視区域」は原子力施設に起因する一般公衆の被ばく線量を法令に定める値を超えないよう一般の方々の不要な立ち入りを制限する区域である。(2016年3月14日更新)


  • 【6-4-3】放射線業務従事者の放射線管理


    管理区域内で働く放射線業務従事者に対しては、所定の手順に従った厳しい放射線管理が行われている。
    放射線業務に従事する前に、健康診断、放射線防護教育、被ばく歴調査などが行われ、発電所管理区域への入退域は、管理区域の出入り口に隣接した建屋で行い、防護装備や個人線量計の着脱、身体表面や持ち出し物品の汚染検査 等が行われる。
    なお、外部被ばく管理については、個人毎に警報付き個人線量計等を装着して作業中の放射線量を測定、内部被ばく管理については、定期的にホールボディカウンター(WBC)を用いた測定・評価を実施し管理している。(2016年3月14日更新)


  • 【6-4-4】線量限度について


    一般公衆、放射線業務従事者の線量限度は、ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告を踏まえ法令により定められている。(2016年3月14日更新)


  • 【6-4-5】放射性物質の環境における移行


    原子力施設から放出された気体と液体の放射性物質は、環境中を拡散しながら移動し、その一部が土壌・河川・湖沼・海洋に移行する。そのため、放射性物質を含む水道水や農作物を飲食したり、放射性物質を取り込んだ畜産物・水産物・海産物などを食べたりすることで、放射性物質は私たちの体内に取り込まれる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-4-6】原子力施設周辺の環境放射線モニタリング


    原子力施設周辺の放射線を定期的に、または連続的に測定監視することを環境放射線モニタリングという。
    環境放射線モニタリングでは、原子力施設周辺の空間放射線量率の測定(モニタリングポスト、モニタリングステーション、モニタリングカー)や環境試料(陸上、海洋)の採取・測定を行い、放射線・放射能による周辺環境への影 響がないことを確認している。(2016年3月14日更新)


  • 【6-4-7】環境放射線モニタリング(例)


    事業者や地元自治体は原子力施設周辺の空間放射線量率を監視するため、敷地周辺にモニタリングポスト、モニタリングステーション、積算線量計を設置している。さらに、敷地周辺の土壌、農畜産物、河川、海水、水産物等の環境試料などを定期的に採取して、その中に含まれる放射能の測定を行っている。
    これらの測定結果は定期的に各自治体のホームページなどで公表されている。(2016年3月14日更新)


  • 【6-5-1】放射線計測器の測定原理


    放射線の測定には、放射線のもつ電離作用、蛍光作用、透過作用等の特性が利用されている。電離作用を活用したものが電離箱である。これは、電極の間の気体を放射線が通過すると多数の自由電子が電離し電流が流れるので、この電流信号から放射線量等を測定する仕組みになっている。GM計数管(ガイガー・ミュラーカウンタ)も、放射線の電離作用を利用しており、GM管に高電圧を掛けて放射線の数を測定する。シンチレーション式の測定器は、放射線の蛍光作用を活用したもので、ガンマ線のエネルギーや線量を測定するNaI(ヨウ化ナトリウム)やCsI(ヨウ化セシウム)の結晶を用いた測定器である。(2016年3月14日更新)


  • 【6-5-2】放射線測定の分類


    放射線の測定器は、(1)表面汚染の測定(放射性物質の有無を調べる)、(2)空間放射線量の測定、(3)個人被ばく線量の測定、を目的とした3つに分類される。測定する放射線の種類によっても使用する測定器は異なる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-5-3】表面汚染の測定


    スクリーニング検査(汚染検査)は、衣服や身体表面(露出している部分)における外部汚染の判定と、放射性ヨウ素等の吸入による内部汚染(内部被ばく)の評価のために行われる。ベータ線の測定器には、GM計数管(ガイガー・ミュラーカウンタ)が用いられる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-5-4】空間放射線量の測定


    原子力発電所等の周辺において空間放射線量を連続的に監視、測定するために設置される装置をモニタリングポストという。主に、ガンマ線の測定を目的とするため、「シンチレーション式検出器」や「電離箱式検出器」が用いられる。携帯用の放射線測定器には、ガンマ線を測定するシンチレーション式サーベイメータや電離箱式のサーベイメータ、中性子線を測定するサーベイメータがあり、測定する放射線の種類により異なる。(2016年3月14日更新)


  • 【6-5-5】個人被ばく線量の測定


    外部被ばくの測定には、ガラスバッジ、熱ルミネッセンス線量計、蛍光ガラス線量計、電子式線量計等の個人線量計を用いる。内部被ばくの測定は、体外計測法(直接法)またはバイオアッセイ法(間接法)で行う。前者は、体内から体外に透過してきたガンマ線やエックス線を測定して、体内摂取量を評価する。後者は、便や尿等の生体試料に含まれる放射性物質の量を測定し、体内摂取量を評価する。後者は主に、アルファ線やベータ線を出す放射性物質の場合に有効である。(2016年3月14日更新)


  • 【6-5-6】食物等に含まれる放射能の測定


    ゲルマニウム半導体検出器を用いれば、環境試料中の極微量の放射能測定が可能である。
    手順は、まず、放射能を測定する食品等を測定しやすいよう前処理(解体、炭化、灰化、濃縮等)を行う。その後試料を周囲の放射線を遮へいするため鉛容器におさめられた検出器の上に直接乗せて測定。
    検出器で感知された放射線エネルギー等の情報は、波高分析装置に送られ、放射能の種類と濃度が解析される。(2016年3月14日更新)


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